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研究室の紹介

我々のグループでは赤ちゃんが欲しい(今すぐでも、将来的にでも)希望をお持ちで子宮や卵巣の病気になってしまった時に主に内視鏡手術(腹腔鏡手術・子宮鏡手術)で機能温存治療を行うことを専門としています。主な対象疾患は子宮筋腫や子宮内膜症になります。中でも子宮内膜症の患者さんは不妊だけでなく痛みなどで悩むことも多く、特に赤ちゃんの希望が無くても治療の相談を受けることは可能です。我々のグループではこの様に内視鏡手術を行いながら以下にあげるような研究を行っております。

 

1)子宮内膜症の病態解明と新規治療法の探索

子宮内膜症は女性の生殖能力を障害する代表的疾患である。子宮内膜症は主に卵巣、腹膜、子宮などの骨盤内に進展する疾患です。子宮内膜症の進展により不妊、疼痛および卵巣嚢腫の癌化の問題が指摘され、妊娠年齢が高齢化している現在において深刻な問題となっています。現在子宮内膜症の治療は手術療法や薬物療法が選択される。しかしながら手術療法は外科的侵襲による卵巣機能の損傷の問題があり、薬物療法はホルモン感受性という病態に着目した治療が行われ、この場合、排卵機能を抑制することになります。すなわち、現在の治療方法は妊娠を望む患者にとっては必ずしも有効な治療とはいえず、妊娠を望みながら子宮内膜症を治療するために生殖機能に影響を与えない新たな治療戦略が必要とされます。我々は子宮内膜細胞の特性を解析し、ホルモン療法によらない新たな治療戦略を開発することを目指しています。
我々が特に着目したのは上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition, EMT)と呼ばれる細胞特性です。EMTは組織の表面を覆う上皮細胞が状況によって組織の間隙を埋める間葉細胞に変化する現象のことです。古くから発生期の器官形成過程で重要な役割を果たすことが明らかとされていましたが、近年癌細胞の浸潤や線維症といた病気との関連も示唆されています。我々はこれまでの研究によりEMTが子宮内膜の月経周期における再生や子宮内膜症の病巣形成に関与する可能性を見出しました。今後研究を重ねEMTを糸口とした新たな子宮内膜症治療の実現を模索していこうと考えています。

 

2)子宮内膜症の卵子質に与える影響の解析

子宮内膜症の患者さんの中には不妊症に苦しみ、なかなか赤ちゃんを授かることができずに悩んでいらっしゃる方がいます。子宮内膜症によって不妊症になった場合(子宮内膜症性不妊といいます)手術や体外受精により妊娠率の向上を図ることになります。子宮内膜症性不妊に対し体外受精は有効な治療のひとつでありますが、その場合の成功率は卵管異常(卵管性不妊)で体外受精をうける患者さんに比べ成績が悪いとされます。これの一つの理由に子宮内膜症が卵巣に発生すると卵巣の機能を低下させ、またそこにある卵子の質を低下させる可能性が考えられています。しかしなぜ子宮内膜症の存在が卵巣や卵子に悪影響を与えるのかについて詳細はわかっていません。我々は子宮内膜症患者さんの卵巣に起こる変化について解析加え、そのメカニズムの解明や治療法を探っています。

 

3)MRIによる非侵襲的腹腔内癒着評価

癒着というのは病気や手術などの影響によって本来接していても離れている臓器同士が硬く接着してしまう状態をいいます。産婦人科の領域でも腹腔内、特に卵巣や子宮、卵管のまわりに癒着を認めることは珍しくなく、不妊や骨盤痛の原因となるといわれています。これまでの子宮卵管造影とよばれる放射線を用いたレントゲン検査や超音波検査などでこの癒着を評価することは行われてきましたがその精度については限界がありました。また、産婦人科でもMRIと呼ばれる磁気を用いて体の断層写真の撮影を行う検査が子宮や卵巣の異常を評価するために用いられています。最近このMRI検査の機器の性能が向上した結果、MRIを用いて体の部位を経時的に撮影することでアニメーションのように動画を作製することが可能となりました。我々はこれを応用して子宮や卵巣周囲の癒着の評価を行うことができないか研究を進めています。MRIは放射線を浴びる心配もなく、またこの手法での撮影をおこなっても通常の撮影時間に5分程度の追加時間を要するのみで健康への悪影響はありません。今後、手術前後の癒着評価や不妊症検査への応用が可能か検討していきたいと考えています。


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