ニューストピック[2005]

2005(平成17)年

2005.11.11
浜谷敏生君(71回)、三四会奨励賞受賞

 卵子はいうまでもなく個体を発生できる唯一の細胞であるが、なぜ卵子がこの性質(全能性)を持っているのか、それに関わる蛋白や細胞内のメカニズムの解明は極めて魅力的な分野である。卵子の持つ「様々な組織を作ることが出来る」というこのメカニズムは、血液や神経の幹細胞が部分的に持っていると考えられ、最近飛躍的に発展しつつある幹細胞を用いた再生医療においても、卵子や、ES細胞を含む幹細胞の組織形成能は極めて重要な研究分野である。
今回浜谷敏生君が受賞した「マウス着床前期胚の遺伝子発現プロファイリング」の研究は、現在の体外受精における初期胚発生のメカニズム解明を通して不妊症治療に直接役立つばかりではなく、マウス初期胚が4細胞まで全能性を持つと言われることから、再生医学にも大きなインパクトを与えている。浜谷 君はアメリカ、米国国立衛生研究所(NIH)のなかにある洪実先生の研究室で、半年以上、来る日も来る日もマウス初期胚と格闘し、信頼に足るデータを最新のDNAマイクロチップ技術によって幹細胞や全能性に関与すると推測される遺伝子を解明し、それをDevelopmental Cell、PNAS、Human Molecular Geneticsといった権威ある雑誌に投稿している。
今年帰室した先生は、これから慶應で研究をさらに発展させ、様々な分野の研究者に有用な研究成果を発信し続けるに違いない。これから研究を志す若い研究者達の追い越すべき目標であり続けるよう、先生のますますの研究の発展を心から願ってやまない。
(61回 久慈直昭)

2005.8.25
内田 浩君(73回生)、升田博隆君(76回生)
第23回日本ヒト細胞学会にて研究奨励賞を受賞

 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の内田 浩君(73回生)と升田博隆君(76回生)の両君は、平成17年8月つくば国際会議場で開催された第23回日本ヒト細胞学会(8月25日〜27日)において、内田君は“Histon deacetylase inhibitors-induced glycodelin is deeply involved in cytodifferentiation in human endometrial adenocarcinoma cell line, Ishikawa.”、升田君は“Isolation and identification of putative stem/progenitor cells from human cycling endometrium”の演題にて研究奨励賞を受賞した。本賞は毎年、ヒト細胞を用いた研究において、優れた業績を上げた研究者に対して日本ヒト細胞学会から与えられる賞である。内田君は、分化促進作用も含めて抗癌剤として期待されているヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の作用メカニズムに、glycodelinという分泌糖蛋白が関与していることを明らかにした。升田博隆君は、本塾生理学教室(岡野教授)との共同研究として、「ヒト子宮内膜幹細胞の同定・分離と応用」を目標に研究を行っている。子宮内膜を対象とした再生医療の分野では、国内外を通して最先端の研究である。いずれもが、その新規性、臨床応用への発展性、および研究成果が高く評価されて受賞にいたった。
(65回  産婦人科 丸山 哲夫)

 

2005.8.5
中林章君(75回生)第23回日本受精着床学会において世界体外受精会議記念賞受賞

 2005年大阪で開催された第23回日本受精着床学会において, 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室の中林章君(75回生)は, 世界体外受精会議記念賞の対象となり本学会総会にて受賞した。中林章君の発表演題のタイトルは「単一細胞からの重複型遺伝子変異の検出」で, PCRとreal-time PCRを組み合わせて診断することにより1細胞から重複変異を検出できるといった内容。着床前遺伝子診断において有効な診断技術が確立されていない重複型に対する診断法で, 高い評価を得て受賞に至った。

2005.1.29
当科におけるTracherectomy後の妊娠出産例に関し新聞報道がありましたのでご紹介いたします。
子宮温存手術後に出産 進行頸がんの30代女性 慶応大病院

 進行した子宮頸(けい)がんと診断された関東在住の30代女性が、特殊な子宮温存手術を慶応大病院(東京都)で受け、 昨年秋に男児を無事出産したことが29日分かった。
  進行期の標準的な手術は子宮の全摘出で不妊となる。温存手術は1987年から海外で約300例実施され、うち90例以上で出産しているが、慶応大産婦人科(野澤志朗教授)は 「国内では妊娠、出産ともに初めて」としている。
  子宮頸がんが若年層で急増し、出産も高齢化する中、妊娠、出産の可能性を残せる手法として注目される。
  女性は2003年春、子宮入り口の子宮頸部に、幅約1センチ、深さ数ミリの浸潤がんがあると診断された。 慶応大で、開腹して通常の根治手術と同様にリンパ節と 基じん帯(子宮頸部と骨盤をつなぐ組織)を切除した上、子宮頸部を切り取り、残した子宮と腟をつなぐ手術を受けた。  
  約1年後に人工授精で妊娠し、昨年秋帝王切開で出産した。早産だったが母子とも元気という。  
  慶応大は02年からこの手術を始め、これまで26−39歳の20人に実施。適応の目安は、がんの直径が2−3センチまでで、 事前の検査で転移の疑いがない場合。
  これより初期では患部の部分切除が可能だが、今回のような進行期では大半の施設が子宮を全摘出している。
  慶応大産婦人科の福地剛医師は「すべての患者に行える手術ではなく、適用できるかどうか、術前に画像診断などで、がんの進行度や悪性度を検討することが最も大切」としている。
  開腹せず腹腔(ふくくう)鏡を使う温存手術は倉敷成人病センター(岡山県)で01年から13例実施しているが 妊娠、出産はない。
  子宮摘出では、不妊になり海外などで別の女性に出産してもらう代理出産に臨む夫婦もいる。

(2005年1月29日 産経新聞より)