ニューストピック[2007]

2007(平成19)年

2007.12.10
日本更年期学会において、高松潔君(65期)が学会賞、小川真理子君(74期)が学術奨励賞を受賞


 更年期医療は高齢化社会を迎えるにあたりニーズはますます増えており、臨床試験を基にしたエビデンスが相次いで確立されつつある。各種ガイドラインも作製され臨床上、産婦人科医以外でも注目されてきているホットな領域である。 このような背景のもと平成19年10月17日、18日の両日、第22回日本更年期医学会が大手町サンケイプラザで開催された。

 その学会において、高松潔君(65期、東京歯科大学市川総合病院・教授)が日本更年期学会学会賞を、小川真理子君(74期、東京歯科大学市川総合病院)が学術奨励賞を受賞した。

  高松君は慶應義塾大学病院産婦人科時代から東京歯科大学市川総合病院に至るまでの豊富な臨床データーを基に「日本人女性の更年期障害における精神的症状に関する検討」を行い、その詳細について本学会中に受賞講演を行った。満席の会場が本会員の注目度の高さを物語っていた。また高松君のもとで指導を受けた小川君は「更年期外来における不安障害の検討」のテーマで発表し、内容の充実度が評価され、40歳以下の若手を対象とした学術奨励賞を受賞した。

 
2007.11.22
升田博隆君(76期)が三四会奨励賞を受賞


 三四会奨励賞は、慶應義塾大学医学部三四会が、臨床医学、基礎医学、地域医療、社会貢献または三四会活動等において顕著な業績を挙げた者に、毎年10名程度を厳正に選出し、授賞するものである。本年の授賞式が去る11月9日の慶應医学会総会で行われ、升田博隆君(76期)が受賞の栄誉に預かった。

 子宮内膜症(内膜症)は「子宮内膜様組織が本来の正常な位置、すなわち子宮腔内面以外の組織や臓器などに、異所性に存在し増生するために生じる病態」と定義され、月経困難や下腹部痛などを主症状とする治療困難な疾患であり、早期病態解明と治療効果の高い薬剤の開発が望まれる。内膜症をはじめとした内膜の研究ツールとしてのモデル動物はいくつか存在するが、それぞれに問題点を伴うのが現状であった。升田君は,そのさまざまな問題点を克服した新しい内膜症モデルマウスの開発を行った。
 免疫不全マウスの腎臓被膜下に移植されたヒト子宮内膜細胞は移植部位において子宮内膜様組織の再構築を認め、estradiol(E2)とprogesterone(P4)の調節投与により様々な月経周期様変化を起こした。また、再構築組織内にはマウスの血流を持ったヒト細胞由来の血管再構築も認められ、局所的に子宮内膜が再現されていることが確認された。また、内膜細胞にlentivirusを感染させることでluciferaseを恒常的に発現する細胞を作成し、同様に移植したところ、再構築された組織のE2依存的な用量時間的増大やICI (E2のアンタゴニスト)投与によるE2依存性増大に対する拮抗作用およびE2とP4の調節投与による月経様変化を、luciferaseによる発光の強度を用いて非侵襲的かつ経時的に体外から定量化できた。
 少量の細胞から均一の異所性内膜様組織を持つ動物モデルを作成することに成功し、長期にわたりその内膜様組織の非侵襲的かつリアルタイムな定量化が体外より可能であったことから、このモデルは内膜症の新規薬剤の評価システムに加えて、内膜症および正常内膜の機能メカニズムの解明への貢献も期待される。その新規性、臨床応用への発展性が高く評価されて受賞にいたった。

 またこの研究はNoninvasive and real-time assessment of reconstructed functional human endometrium in NOD/SCID/gamma c(null) immunodeficient mice.としてPNAS(Proceedings of the National Academy of Science of United States of America)に掲載された。

 
2007.11.9
丸山哲夫君(65期)らが子宮筋から組織幹細胞を含む細胞集団の同定に成功


 これまで生殖内分泌研究室の丸山哲夫講師(65期)の指導のもと、小野政徳君(79期)によって一部学会発表されてきた子宮筋からの組織幹細胞を高率に含む細胞集団の同定に関する成果が、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)に掲載されることになった。 注目度も高く各社より報道があった。転載の許可を得て、毎日新聞社の報道記事を掲載する(原文ママ)。

子宮筋幹細胞:慶大が発見 子宮筋の再生などに期待

 慶応大医学部の研究グループが、子宮の筋肉からさまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞を発見した。がんの手術で欠損した子宮筋の再生など、再生医療への応用が期待される。近く、米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載される。
 グループは、幹細胞の可能性がある細胞を見分けられる特殊な色素を使用。人間の子宮筋から幹細胞の候補細胞を選び出し、マウスの子宮に移植すると、人間の子宮筋が作られた。候補細胞を移植したマウスを妊娠させたところ、妊娠や分娩(ぶんべん)に重要な働きをする人間のたんぱく質も出ていた。
 さらに、骨や脂肪へ誘導する培養液を使って候補細胞を培養すると、骨や脂肪に分化し、幹細胞であることを確認した。この候補細胞は、子宮筋に3%程度含まれているという。
 グループの丸山哲夫講師(生殖内分泌学)は「子宮頸(けい)がんなどで患部を切除すると、早産や破水のリスクが高まる。発見した幹細胞を使って子宮の欠損部を再生できるようになれば、リスクを抑えられる可能性がある。まだ道は遠いが、子宮そのものを作り出す第一歩ともなる」と話している。【河内敏康】

 
2007.10.19
小野政徳君(79期)が日本生殖内分泌学会において、学術奨励賞、大会長賞を受賞

 平成19年10月19日、東京大学農学部キャンパスにおいて、第12回日本生殖内分泌学会が開催された。同学会において、当教室の小野政徳君(79期)は、「妊娠子宮における子宮筋side population細胞の役割」と題し、これまで子宮筋からの幹細胞様細胞の分離に成功していたが、さらに妊娠期における子宮の急激な容積膨大は、幹細胞主体による増殖と分化の結果という仮説をたて、単離した幹細胞様細胞の人為的な機能分化に踏みこんだ研究成果を発表した。
 小野君はこの発表で、最近注目の再生医学研究においても、堅実かつ先進的な研究であるとして、学術奨励賞そして大会長賞をダブルで受賞した。また、同学会の学術奨励賞では昨年度、小野君と同じく丸山講師の研究室に国内留学で所属していた太田邦明君が受賞しており、当教室の2年連続の受賞となった。
 当教室の産婦人科領域における再生医学・幹細胞研究はその実績から注目度も高く、これまで小野君の日本産科婦人科学会最優秀演題賞、日本内分泌学会若手学術奨励賞、日本平滑筋学会ポスター優秀賞、升田博隆君(76期)の日本産科婦人科学会最優秀演題、日本内分泌学会若手学術奨励賞、日本ヒト細胞学会学術奨励賞など数多くの表彰の栄誉に預かっている。

 
2007.8.31
内田 浩君(73期)、櫻井友義君(80期)が日本受精着床学会において、世界体外受精会議記念賞を受賞

 平成19年8月30日、31日の両日にわたり、宮城県仙台市の仙台国際センターにおいて、第25回日本受精着床学会が開催された。同学会は過去に本邦で開催した世界体外受精会議を記念し、標題の記念賞を設けて基礎部門と臨床部門の最優秀演題に対して表彰している。
 第21回大会(平成15年:田島博人君[76期])、第22回大会(平成16年:寺西貴英君[75期]、古谷正敬君[76期])、第23回大会(平成17年:中林 章君[75期])、第24回大会(平成18年:内田君[73期]、田島君[76期])と、立て続けに同賞を受賞しているという当教室とはご縁の深い賞であるが、今大会でも基礎部門、臨床部門ともに当教室から受賞者を輩出する形となった。
 内田君は「N-cadherinの着床プロセスへの時期依存的関与ー胚伸展と内膜による胚被覆機序ー」の演題で昨年に引き続いての基礎部門受賞となった。これは、同君の帰室以来のヒト着床の分子機序解明の研究成果によるものである。
  一方、臨床部門は「筋強直性ジストロフィー患者における着床前診断の可能性とその問題点」と題して発表した櫻井君が受賞した。この受賞は、教室の末岡准教授率いる生殖遺伝研究室が行っている着床前診断に関連した臨床技術開発の一連の成果が、継続的に認められていることを示しており、本年も本邦における出生前診断の技術確立に功績をもたらす研究として受賞となった。

 

2007.6.14
丸山哲夫君(65期)が日本内分泌学会において、研究奨励賞を受賞


 第80回日本内分泌学会学術総会(平成19年6月14日〜16日)において、当教室の丸山哲夫君(65期)が日本内分泌学会研究奨励賞を受賞した。本賞は継続的で卓越した内分泌学的研究業績に対して与えられる栄誉ある賞である。

 ヒト子宮内膜は周期的な剥脱・再生を繰り返し、生命の世代継承の場ともなる特異な組織であり、生物学的特性には興味深い点が多い。また近年の再生医学においても、その頻回な再生能力から注目される組織でもある。しかしながら、子宮というブラックボックスに包まれた内膜組織の分子機序の解明には困難が伴う。丸山君の二十年余の研究は、一貫してこのヒト子宮内膜の謎に迫るものである。子宮内膜の脱落膜化(妊孕能獲得のための分化形態)の分子機序解析から、着床制御機構、さらには子宮内膜・子宮筋由来の組織幹細胞単離研究へと発展しており、その蓄積された継続的で卓抜した業績が学会に高く評価され今回の受賞へとつながった。

 今回多くの内分泌分野の中から生殖内分泌学の研究として、同君の業績が授賞の栄誉を賜ったことは、本塾の産婦人科研究にとっても、さらなる飛躍の礎となるものである。