ニューストピック[2010]

2010(平成22)年

2010.12.23
宮越敬君(71期)が第26回日本糖尿病妊娠学会にて研究奨励賞(大森賞)を受賞

宮越敬君(71期)が大森賞 平成22年11月26、27日に開催された第26回日本糖尿病・妊娠学会にて当教室の宮越敬君が大森賞を受賞した。

【受賞演題】新診断基準による妊娠糖尿病合併妊婦における膵β細胞機能に関する検討

 日本糖尿病・妊娠学会は糖代謝と妊娠に関する基礎的、臨床的課題を内科医、産科医、小児科医、看護(助産)師など幅広い分野の人々が集まって研究し、母子の健康に寄与することを目的とした学会である。本年7月に妊娠糖尿病の診断基準が変更されたため、今回の年次集会では新基準導入による周産期予後の変化や今後の対応を中心に活発な討論がなされた。
 新基準は周産期異常の発症リスクに基づいた基準であり、将来的な2型糖尿病発症リスク、すなわち膵β細胞機能については諸外国においても十分に検討されていない。慶應義塾大学病院における2004年以降の妊娠糖尿病スクリーニング陽性例(631例)を対象とした同君の検討によると、膵β細胞機能は新基準1点>2点>3点陽性の順に低値を示し、正常例に比べると新基準1点陽性例においても膵β細胞機能低下を認めること、すなわち将来的な2型糖尿病のハイリスク群であることが示唆された。
 日常診療で施行する経口糖負荷試験結果による膵β細胞機能指標を用いて、新基準を適用した際の妊娠糖尿病例の糖代謝異常の重症度を検討した点が高く評価され、今回の受賞に至った。

 

2010.11.12
阪埜浩司君(71回)が平成21年度Best Teacher Awardに選ばれました。

阪埜浩司君(71回) Best Teacher Awardとは、医学部1年生から6年生の学生が学年ごとに教員を評価する制度で、各学年3ずつ計18人が選ばれます。今回、阪埜浩司君が第5学年の選ぶ第3位となりました。当Awardは実習のほかクルズスが大きなウェイトを占める傾向があり、手術実習に重きを置く外科系診療科は内科系診療科に比べて不利とされています。そのような中で、阪埜君は長年ポリクリ担当として、診療実習やクルズスを通じて熱血感あふれる学生教育を行い、今回の受賞となりました。指導を受けた学生の中には、彼の熱烈なファンになる生徒も数多く、学生の中で名物教官としての地位を築いています。今後も学生の産婦人科への興味を湧き立てる彼の活躍を期待します。

 

2010.11.8
当教室の梅津桃君(83期)が第33回母体胎児医学会にて優秀演題賞を受賞しました。

【演題名】濃縮プルーンの摂取開始後1週間で動脈管早期閉鎖による胎児水腫をきたした一例

【概 要】症例は経産婦。妊娠38週0日に胎児水腫を指摘され、当院ハイリスク胎児外来へ紹介初診となった。著明な肺動脈拡張、動脈管血流途絶、右心不全、胸腹水を認め、動脈管早期閉鎖による胎児水腫と胎内診断された。生活習慣歴の聴取により、妊婦本人が便秘改善および体調管理のため妊娠37週より濃縮プルーンおよび紫色の野菜ジュースの摂取を開始していたことが判明した。赤、青、紫を示す食品に多く含まれるアントシアニンは、抗酸化およびCOX2阻害作用を有する色素である。本症例では、アントシアニンの摂取が胎児動脈管閉鎖を誘発した可能性が示唆された。

近年の健康志向にともない、いわゆる健康食品(飲料)は女性、特に“くすり”に過敏な妊産婦に好まれる。しかしながら、「健康食品には胎児への影響が不明な成分が含まれることもある」という注意喚起も必要である。本症例では、梅津桃君による詳細な生活習慣歴の聴取が胎児疾患の原因検索に有用であった。今後も同君の臨床症例における探究心に期待したい。

 

2010.10.27
当教室の浅井哲君(81期、川崎市立川崎病院出向中)のCase Reportの3D超音波/CT画像がPrenatal Diagnosis誌(2010年2月号)の表紙を飾りました。

 A case of Tessier number 7 cleft with severe micrognathia: prenatal sonographic and three-dimensional helical computed tomographic images

 Lateral facial cleft (Tessier number 7 cleft: 顔面横裂)は巨口症、顔面横筋裂、上顎/下顎骨異常を主徴とする稀な疾患である。本症例では、児は羊水過多を契機に当院ハイリスク胎児外来に紹介受診となり、3D超音波および3D CT検査により顔面横裂と胎内診断された。顔面横裂の特徴的所見が3D画像として的確かつ鮮明に描出されている点が出生前診断の専門誌に高く評価されたものと考えられる。

 浅井君は大学病院在籍中より周産期医学を中心の症例報告の学会発表および論文執筆に積極的に取り組んでいる。今後も浅井君の「日常診療で遭遇した症例お病態生理を深く掘り下げ、新知見を積極的に発表する姿勢」に期待したい。

 

2010.10.25
【日本胎盤学会相馬賞】辻紘子君(81期)が第18回日本胎盤学会学術集会/第28回絨毛性疾患研究会にて、相馬賞を受賞

 平成22年9月30日、10月1日の二日間ホテル日航熊本において第18回日本胎盤学会学術集会/第28回絨毛性疾患研究会が開催され、当教室の辻紘子くんが相馬賞を受賞した。

 日本胎盤学会/絨毛性疾患研究会は周産期から絨毛性疾患までの臨床及び、胎盤や絨毛に関わる研究を取り扱う学会であり、数ある演題の中で、辻紘子くんが発表した「ヒト羊膜由来間葉系幹細胞は、異種移植下で免疫学的寛容が成立し心筋に分化する」が相馬賞を受賞した。これは同君が当院循環器内科との共同研究にてヒト羊膜由来間葉系幹細胞の心筋再生医療への応用について行った研究の報告である。

 心筋再生医療に用いられている間葉系幹細胞は従来、骨髄由来のものが主なものであるが、免疫拒絶、心筋分化誘導効率の低さ、患者の基礎疾患等の問題があげられている。同君の発表では、ヒト羊膜由来間葉系幹細胞の心筋再生細胞医療での有用性を検討した。まず、ヒト羊膜より羊膜由来間葉系幹細胞を樹立し、in vitroにて生理学的に有用な心筋細胞への分化を示した。さらにin vivoでは心筋梗塞モデルヌードラットに移植した後、心筋細胞への分化を認め、心機能を改善させることを示した。さらに免疫学的に正常な心筋梗塞モデルWistar ratに免疫抑制剤を用いずに移植したところ、最大80日後までの生着生存、心筋分化を認めた。これらの所見は羊膜由来間葉系幹細胞が心筋分化能だけでなく、免疫寛容能も持ち合わせていることを示しており、他家移植可能な細胞源として今後心筋再生細胞医療における有用性が期待され、今回の受賞に至った。

 

2010. 10.6
菅原かな君(84期)が第28回日本受精着床学会総会にて、世界体外受精会議記念賞を受賞

 平成22年7月28日、29日の2日間パシフィコ横浜において第28回日本受精着床学会が開催され、当教室の菅原かな君が世界体外受精会議記念賞を受賞した。

 日本受精着床学会は不妊治療、特に生殖補助療法に関する学会であり、239題に達する演題のなかで、菅原かな君が発表した「子宮頚部早期浸潤癌に対するradical abdominal trachelectomy後の妊孕性と妊娠転帰」が世界体外受精会議記念賞を受賞した。これは同君が当院婦人科でのradical abdominal trachelectomy手術症例と、その後産科にて不妊治療及び妊娠管理を行った症例の報告である。

 同君の発表では、子宮頚部早期浸潤癌を伴う若年女性の妊孕性温存手術として本邦で急速に普及しつつある、radical abdominal trachelectomy術後の妊娠分娩例9例の妊娠に至る経過と妊娠経過について報告された。radical abdominal trachelectomy後の妊娠ではAIH・IVFなどの不妊治療が必要になる症例が多く、妊娠した場合に予防的頚管縫縮術を行なった症例であっても妊娠28週未満の早産分娩が起こる危険性が高いということが示唆された。今後、radical abdominal trachelectomyを希望する患者に対しては、治療に関わる不妊治療担当医からも十分な説明が必要であるという考察を加えた内容である。今後、このような症例を多く取り扱う施設での更なる研究により、子宮頚部浸潤癌癌患者の妊孕性温存、妊娠に対する適切な管理の可能性が期待され、今回の受賞となった。

 

2010. 7.1
村上功君(82期)が第16回日本遺伝子治療学会において優秀ポスター賞を受賞

 平成22年7月1日から3日までの3日間栃木県総合文化センターにおいて第16回日本遺伝子治療学会が開催され、当教室の村上功君(82期)が優秀ポスター賞を受賞した。

 日本遺伝子治療学会は遺伝子治療分野における最大の学会であり、100題に達する演題のなかで、村上功君が発表した「An adeno-associated virus vector efficiently and specifically transduce mouse skeletal muscle」が優秀ポスター賞を受賞した。これは同君が国内留学先の国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センターにて行った研究である。

 同君の発表は、治療用遺伝子を筋肉で長期間高発現させる遺伝子治療戦略への応用を念頭に、骨格筋への感染効率が高くかつ筋肉特異的プロモーターから導入遺伝子が高発現するアデノ随伴ウイルスベクターの開発についての研究成果であった。今回開発されたアデノ随伴ウイルスベクターを用い、筋肉で欠損遺伝子を発現させる遺伝子治療への応用が期待され今回の受賞となった。

 

2010. 4.25
日本産科婦人科学会で受賞
優秀論文賞:荒瀬透君 (79期)
優秀演題賞:進伸幸君 (65期)

 平成22年4月23日から25日までの3日間、東京国際フォーラムにおいて第62回日本産科婦人科学会学術講演会が開催された。

 今大会から新設された優秀論文賞は、周産期医学、生殖医学、腫瘍医学、女性医学の4部門において、年間で国内外の科学雑誌に掲載された論文のうち、厳正な審査を経て最も優秀と判断された論文の発表者に授与される賞である。記念となる第1回目の優秀論文賞のうち、生殖医学の部門で、当教室の荒瀬透君(79期)の論文、「The UDP-glucose receptor P2RY14 triggers innate mucosal immunity in the female reproductive tract by inducing IL-8 ( J Immunol 2009 ) が選出され受賞となった(写真上)。

 今大会もまた、数多くの研究発表がなされたが、腫瘍医学部門において最も優れた発表として進伸幸君 (65期) の演題が優秀演題賞として表彰された(写真下)。発表課題は『Sentinel Navigation System(SNS) を用いて微小転移リンパ節を確認し得た子宮体癌 5症例』で、同君や片岡史夫君(75期)が中心になって行っている、病理診断部、放射線科、外科との学内共同研究である。現在、腫瘍臨床において原発癌病巣から最初に転移した先のリンパ節の同定が注目されるトピックとなっている。早期子宮体癌症例におけるSNSの確立と後腹膜リンパ節郭清の省略による術後合併症のQOL軽減を目的として開始された臨床試験であり、本邦では1施設からの報告しかない現状である。この臨床試験中に、高率にセンチネルリンパ節に径2mm未満の腫瘍径の微小転移巣や0.2mm以下のisolated tumor cell(ITC)を確認し得、さらに後方視的に転移リンパ節の腫瘍径と 予後との関連を検討することにより、まだ未検証である子宮体癌における微小転移やITCの意義について初めて考察を加えた内容である。同君の演題は、正にこの新しい治療戦略の実戦の様子を豊富な症例を背景に系統立てて発表したもので、今後、子宮体癌におけるリンパ節郭清の縮小手術の方向性を提示する研究内容であり、今回の受賞へとつながった。

 

2010. 3. 10
鶴田智彦君(81期)が東京医科歯科大学難治疾患研究賞を受賞

 平成22年2月23日、東京医科歯科大学難治疾患研究所 大学院生・若手研究者研究発表会で当教室大学院生鶴田智彦君(81期)が東京医科歯科大学 難治疾患研究賞を受賞した。

 この研究会は基礎研究に携わる大学院生・若手研究者が日頃の成果を発表するものであり、今回「DNAメチル化異常により発現抑制される子宮体癌関連癌抑制遺伝子型microRNAの機能的スクリーニング」の演題で受賞した。

 鶴田君は東京医科歯科大学難治疾患研究所分子細胞遺伝(稲澤譲治教授)で大学院特別研究生として婦人科悪性腫瘍特に子宮体がんにおける発癌・進展機序に関与する分子機構の解明をテーマに研究を行っている。同君の研究は、近年ゲノム情報発現系における新たなネットワークとして注目されているmicroRNAの機能的スクリーニングによって子宮体癌の増殖抑制を行うmicroRNAを同定するというものである。独創的なアプローチあることや新たな子宮体癌治療体系の構築に寄与する研究として高く評価され今回の受賞に至った。
 

2010. 01. 18
古谷正敬君(76期)が 日本エンドメトリオーシス学会演題発表賞 を受賞

 平成22年1月16日と17日の両日、京都府の京都東急ホテルにおいて、第31回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会が開催された。

 同会において、当教室の古谷正敬君(76期)が演題発表賞(基礎部門)を受賞した。  

 子宮内膜症に対する治療は薬物療法と手術療法が行われるが、挙児希望を有する患者において治療法の選択に苦慮することも少なくない。薬物療法はホルモン療法によるため排卵を抑制することになり、治療を受けている間は妊娠を望めない。また手術療法は再発や卵巣機能の障害などの問題がある。したがってホルモン療法によらない薬物療法が必要であり、古谷君はそのための治療戦略を模索していた。

 近年悪性腫瘍を中心に注目を浴びている上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる細胞特性に着目し、慶應義塾大学大学院医学研究科生理系専攻先端医科学の佐谷秀行教授、熊本大学大学院生命科学研究部総合医薬科学部門 婦人科学の片渕秀隆教授、リンクジェノミクス株式会社との共同研究により子宮内膜症へのEMTの関与を解析した。EMTに関連するマーカー分子について手術検体を詳細に解析した結果、子宮内膜症病巣では正常子宮内膜組織に比べ上皮細胞が間葉的性質を強く示していることが明らかとなった。また、この特徴が病巣部における線維化、浸潤などと関与することが示唆された。今後本研究をもとに、子宮内膜症病巣部での間葉的性質を抑制するようなEMT制御がホルモン療法によらない新たな子宮内膜症の治療戦略となることが期待される。