ニューストピック[2012]

2013(平成25)年

2013.12.7
長島 隆 君(78期)が日本生殖内分泌学会 学術奨励賞を受賞

長島 隆 君(78期)が日本生殖内分泌学会 学術奨励賞を受賞 平成25年12月7日に東京で開催された第18回日本生殖内分泌学会学術集会において、教室の長島 隆 君(78期)が日本生殖内分泌学会学術奨励賞を受賞した。本会は、基礎は医薬農理学系の会員に加えて、臨床は産婦人科、小児科、泌尿器科、内科などの多分野に亘る会員から構成される学際的な学会である。本賞は、学術集会前の審査にて奨励賞候補として採択された演題の中から、当日の発表内容を基に、独創的かつ卓越した研究内容であると判断された3演題に対して授与される。今回はそのひとつに、Journal of Clinical Investigation誌に昨年掲載された論文(Nagashima T, et al., BMPR2 is required for postimplantation uterine function and pregnancy maintenance)に関連する同君の演題が選ばれた。
 子宮ラセン動脈は、妊娠経過と共に需要量の増大する酸素と栄養素を安定的に供給するため、胎児由来の絨毛膜細胞と共に、自身の血管壁を再構築し拡張することで血流量を増加させる。この再構築が障害されると、子宮内胎児発育遅延や常位胎盤早期剥離などの妊娠関連疾患が発生すると考えられている。しかし、その病態生理に関する分子メカニズムの詳細は不明であった。
 同君は、TGF-βスーパーファミリーに属するBMP蛋白の受容体の1つであるBMPR2を、子宮特異的に欠損するノックアウトマウスを作成・解析した結果、同マウスで、子宮内胎児発育遅延と常位胎盤早期剥離が誘導されることを発見した。さらに、VEGFsとANGPTsによるラセン動脈の形成と安定化、ラセン動脈の再構築に必須である子宮特異的NK細胞の分化、ならびにCORINを介した絨毛膜細胞の子宮内膜への浸潤が、BMPR2により制御されていることを明らかにした。
 本研究は、ラセン動脈の再構築メカニズムに関する新しい重要な基盤知見を与えるものであり、常位胎盤早期剥離の発生機序の一端を解明した点が高く評価された。(記 65期 丸山哲夫)。

 

2013.11.30
太田 邦明 君(90期)第28回日本生殖免疫学会・学会賞を受賞

太田邦 明君(90期)第28回日本生殖免疫学会・学会賞を受賞 平成25年11月30日・12月1日の両日に亘って兵庫医科大学にて開催された第28回日本生殖免疫学会学術集会(会長:兵庫医科大学産婦人科 柴原浩章教授、写真右)において、教室員の太田邦明君(90期、写真左)が平成25年度日本生殖免疫学会・学会賞を受賞した。本学会は生殖という事象を免疫学的見地より研究し、その進歩と発展をはかることを目的とする。毎年、産婦人科学領域にとどまらず、獣医学や基礎医学の分野からも多くの演題が発表される。その中で特に優秀な演題に対し学会賞が贈られる。
 今回の同君の受賞演題「習慣流産において25(OH)ビタミンDは末梢血NK細胞を抑制する」は、留学先[米国イリノイ州シカゴ医科大学 (ロザリンド・フランクリン医科大学シカゴ校) ]での成果を中心にした内容であった。現在に至っても、妊娠において半同種移植片である胎児がなぜ母体に拒絶されないのか、という免疫学的妊娠維持機構の大いなる謎は未解決のままである。これまで、Th2優位なサイトカイン環境や胎盤形成を制御する子宮NK細胞などが妊娠維持機構に寄与することが知られている。しかし、免疫学的妊娠維持機構を制御する主要な因子の実体は未だに明らかにされていない。今回の受賞研究では、妊娠時の免疫寛容化への主要制御因子のひとつとして、ビタミンDがNK細胞の制御を通じて妊娠に有利な免疫環境を形成することを解明した。同君が明らかにしたビタミンDを介する病態改善作用は、免疫賦活作用をターゲットとした新たな不育症の治療法の可能性を呈示したともいえる。近年、様々な局面で脚光を浴びているビタミンD が、ヒトの妊娠・出産に必須である可能性を示した点が、高い評価を受けたと推察される。
 なお同君は、東邦大学医学部産婦人科の大学院生時代に当教室で2年間研究に従事した。学位取得後、東邦大の関連病院で臨床診療に従事した後、平成21年に米国ミネソタ州にあるメイヨークリニックに留学、さらにJoanne Kwak-Kim教授の率いる前述のロザリンド・フランクリン医科大学生殖免疫研究室を経て、平成25年9月から本学教室員として臨床・研究に従事している。本賞も含めて多くの賞を受賞している同君の今後の更なる発展と飛躍を期待したい。(65期 丸山哲夫 記)。

 

2013.11.16
宮崎 薫 君(83期)が日本生殖医学会学術奨励賞を受賞

阪埜浩司君(71期)が平成25年度日本医師会医学研究奨励賞を受賞 平成25年11月15日・16日の両日に亘って神戸で開催された第58回日本生殖医学会学術講演会において、教室の宮崎 薫 君(83期)が平成25年度日本生殖医学会学術奨励賞を受賞した。本賞は、過去1年間に国内外で発表された生殖医学に関する論文の中から、特に優秀な論文に対して授与される賞であり、宮崎君のヒト子宮内膜再構成システムを用いたin vivo幹細胞アッセイの開発に関する論文が選ばれた(PLoS ONE, 2012)。
 ヒト子宮内膜は、月経周期に伴って再生と崩壊を延々と繰り返すことから、特有の幹細胞の存在が示唆されている(Maruyama T, et al., Reproduction, 2010)。子宮内膜side population細胞(ESP)を免疫不全マウスに移植すると内膜様組織が再構築される一方、子宮内膜main population細胞(EMP)にはその性質その性質が認められないことから、ESPは子宮内膜幹細胞の候補とされていた(Masuda H, et al., PLoS ONE, 2010)。しかし、その再構築率は8%と低く、生理学的なESPの分化能を再現良く観察するためには、その分化能を引き出す微小環境(ニッチ)の存在が必要であると考えた。そこで宮崎君らは、ESPあるいはEMPを蛍光タンパクで標識したうえで、ニッチを有すると考えられる全子宮内膜細胞と混合し、免疫不全マウスの腎被膜下に移植した結果、子宮内膜様組織がほぼ100 %の効率で再構築されるとともに、ESPの分化能がEMPよりも高いことを証明した。ニッチ存在下という、より生理的な環境を再現するためのin vivo再構成系と細胞追跡法を用いて、特定のヒト細胞集団の幹細胞特性を証明した点、高率に内膜様組織を再構築し得るアッセイ系を開発した点、最新の画像解析ソフトによる定量的かつ客観的な比較・検討法を用いた点、本アッセイ系がESPだけでなく他の内膜幹細胞候補集団の検証にも応用が可能である点、などが評価されて受賞に至った。さらに、impact factorのより高い優れた論文が多数申請されたなかで、研究の全てが国内で行われた本論文のメイド・イン・ジャパンなる点も評価されたとのことである。
 なお最近では、平成20年に升田博隆 君(76期)、平成21年に長島 隆 君(78期)、そして平成24年には内田 浩 君(73期)が同賞を受賞している(65期 丸山哲夫 記)。

 

2013.11.1
阪埜浩司君(71期)が平成25年度日本医師会医学研究奨励賞を受賞

阪埜浩司君(71期)が平成25年度日本医師会医学研究奨励賞を受賞教室の阪埜浩司君(71期)が平成25年度日本医師会医学研究奨励賞を受賞し、さる2013年11月1日に日本医師会館において開催された第66回日本医師会設立記念医学大会において表彰されました。
日本医師会医学研究奨励賞は昭和36年から50年以上の長い歴史をもつ、我が国の医学界において最も伝統と名誉ある研究奨励賞であり、日本医学会分科会長、大学医学部長、全国都道府県医師会長などから推薦を受けた若手医師や医学研究者が選考を経て、社会医学分野、基礎医学分野、臨床医学分野からそれぞれ5名程度、計15名が表彰されるものです。
我が産婦人科学教室の長い歴史のなかでも、故飯塚理八名誉教授(27期)、牧野恒久前東海大学教授(43期)、丸山哲夫専任講師(65期)の3名しか受賞しておらず、さらに婦人科腫瘍学分野として初の受賞となりました。
彼は臨床や教育の傍ら、子宮体がんにおける新たな発癌機構として注目されているエピジェネティックな異常メチル化に注目した研究活動を行っています。今回のエピジェネティックな異常メチル化により制御されている癌抑制型のマイクロRNAの研究は、新たな創薬やバイオマーカーとしての臨床応用も期待される分野でもあります。今後の彼のさらなる研究の発展が期待されています。

 

2013.10.26-27
桑波田美智子君(86期)が第126回関東連合産科婦人科学会学術集会において優秀演題賞を受賞

桑波田美智子君(86期)が第126回関東連合産科婦人科学会学術集会において優秀演題賞を受賞平成25年10月26日、27日にアクトシティ浜松(静岡県浜松市)にて開催された第126回関東連合産科婦人科学会学術集会において、桑波田美智子君(86期)が優秀演題賞を受賞しました。
発表演題は、「子宮体癌特殊組織型の術前診断におけるunderdiagnosis−子宮体癌特殊組織型53例の術前診断の後方視的検討−」という演題です。
子宮体癌の組織型はご存知のとおり、大部分は類内膜腺癌であり、約10%ほどを特殊組織型が占めています。一般的に、特殊組織型はtype2に分類され、早期例と推定されても子宮外に高率に転移をきたしており、予後が不良であると報告されています。そのため、初回治療である手術療法の際にも、子宮全摘出、両側付属器摘出、骨盤リンパ節郭清に加え、傍大動脈リンパ節郭清や大網切除を行い、子宮外病変の評価を行うことが望ましいとされています。
本研究では、子宮体癌特殊組織型では術前の子宮内膜組織診の正診率は36%に過ぎないことや、術前の画像診断では32%の症例で過小評価されていることが判明し、術前診断の問題点が浮き彫りとなりました。それに対して、子宮内膜細胞診や腫瘍マーカー(CA125)値を利用することで、正診率や感度を改善することが可能であるということがわかりました。
本研究は、実地臨床のpitfallに焦点をあて、対応策を検討したものであり、明日の臨床に役立つ臨床研究であったことが、高く評価されました。
同君は現在、サブチーフレジデントとして、日々臨床や若手の教育にあたっており、その傍らカルテ室に籠って情報収集や解析を行い、本研究をまとめあげてくれました。
今後のさらなる活躍を期待したいと思います。(79期 山上 亘)

 

2013.10.24-26
二宮 委美君(87期)が第51回日本癌治療学会学術集会において優秀演題賞を受賞

二宮 委美君(87期)が第51回日本癌治療学会学術集会において優秀演題賞を受賞平成25年10月24日、25日、26日に国立京都国際会館・グランドプリンスホテル京都(京都府京都市)にて開催された第51回日本癌治療学会学術集会において、二宮 委美君(87期)が優秀演題賞を受賞しました。
発表演題は、「再発子宮体癌に対するドセタキセル+シスプラチン(DP)療法21例の検討」という演題です。
子宮体癌の初回治療は原則手術療法でありますが、術後療法は本邦では再発中リスク群、高リスク群を対象に化学療法を施行している施設が多いのが現状です。これは、再発中リスク群にあたる症例に対して主に放射線療法を行っている欧米とは一線を画しています。こういった背景から、本邦の再発子宮体癌は通常化学療法の既往を有する症例が多くを占めており、したがって再発時に行う化学療法はセカンドライン以降ということになります。
そこで、当教室では再発子宮体癌に対して、現在主にドセタキセル+シスプラチン療法(DP療法)を行っておりますので、その忍容性、有用性について後方視的に解析しました。本研究では、有害事象は比較的軽度であり、投与サイクルの中央値は6サイクルであったこと、奏効率は57%であり、無増悪生存期間の中央値は7.5ヶ月だったこと、無治療期間(TFI)が6ヶ月以上の症例では有意に予後良好であったことが判明しました。
子宮体癌に対するセカンドライン化学療法の忍容性、有用性についての報告はほとんどないことから、本検討は後方視的検討ではありますが、高く評価されたものと考えられます。
同君は国立病院機構東京医療センターより本年、当教室に入局し、現在、フレッシュオーベンとして、臨床および研修医の教育等の日常業務を行いつつ、本研究をまとめあげてくれました。

今後のさらなる活躍を期待したいと思います。(79期 山上 亘)
 

2013.6.15-16
宮崎薫君(83期)が69th American Society for Reproductive Medicine Annual MeetingにてSociety of Reproductive Biologists and Technologists Basic Science Awardを受賞

宮崎薫君(83期)が69th American Society for Reproductive Medicine Annual MeetingにてSociety of Reproductive Biologists and Technologists Basic Science Awardを受賞平成25年10月12〜17日に米国マサチューセッツ州のボストンで開催された第69回American Society for Reproductive Medicine (ASRM,米国生殖医学会) Annual Meetingにおいて、教室の宮崎薫君(83期)がSociety of Reproductive Biologists and Technologists (SRBT) Basic Science Awardを受賞した。

今年で69回目を迎えた伝統ある本会は、International Federation of Fertility Societies(IFFS)と合同で開催された。本会は主に生殖医学を対象にした大規模な米国主導の国際学会であり、米国のみならず世界各国の臨床医家・基礎研究者などの生殖医療従事者が一同に会して、成果発表と学際的な情報交換が行われる。本賞は、審査を経て採択された演題のなかから、基礎生殖科学分野において独創性など特に優秀であると評価された1題に対して授与される。今回は、参加者1万人余で1831演題(口演488題・ポスター1343題)の中から、同君の演題が選ばれた。

子宮の構造不全としては、ロキタンスキー症候群などの先天性子宮・腟欠損に加え、子宮全摘あるいは部分摘出(円錐切除・トラケレクトミー)による後天的な子宮欠損が挙げられる。このような子宮の構造・機能欠損を持つ患者の妊孕性を正常化させることは困難である。本邦では倫理的な問題から代理懐胎は認められていない。ヒトを含めた種々の動物にて子宮移植の試みも各国でなされており、既に昨年5月には、東京大学医学部形成外科学教室と当教室との共同研究により、世界初の霊長類動物モデルを用いた子宮移植後の妊娠出産例が報告されている(Mihara, Kisu, et al., Hum Reprod., 2012)。しかし、心・肺・肝・腎などの臨床的に確立された移植医療においても、それに代わり得る新たな医療として、臓器の再建・再生医療の開発・確立を目指す世界的な潮流がある(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。子宮の移植医療が黎明期にある現状を鑑みても、子宮もその例外ではなく、子宮の再建・再生医療の観点からアプローチする研究は極めて重要である。現在、心臓などの一般臓器の再建・再生医療では、界面活性剤を用いた組織の脱細胞化と、脱細胞化された組織骨格(脱細胞化マトリックス)を用いた組織再生が報告されている(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。そこで本研究では、ラット子宮を大血管付きで摘出しドデシル硫酸ナトリウムを灌流したところ、細胞外マトリックスや微小血管構造を維持したまま細胞が除去され、子宮の脱細胞化マトリックスが完成した。ラット子宮単離細胞などを脱細胞化マトリックスに注入し、培養液を灌流してin vitroで培養した結果、腺上皮と間質を含む子宮内膜の再構築が認められた。更に、ラット子宮角の一部を切除し、脱細胞化マトリックスの一部を欠損部に移植することで、in vivoでの子宮組織の再生が認められ、その後に自然妊娠が成立した。世界に先駆けてラット子宮の完全な脱細胞化法を確立したことに加えて、その脱細胞化マトリックスが妊孕能を有する子宮を再建し得るポテンシャルを持つことを世界で初めて示した。その独創性・新規性、さらには、脱細胞化マトリックスを用いた子宮組織の再構築がヒト子宮再建に向けての有用な基盤技術になりうる、という将来性が評価されて受賞となった。(65期 丸山哲夫)

 

2013.6.15-16
澤野佳子君(89期)が第125回関東連合産科婦人科学会学術集会において優秀演題賞を受賞

澤野佳子君(89期)が第125回関東連合産科婦人科学会学術集会において優秀演題賞を受賞 平成25年6月15日、16日に都市センターホテル(東京)において開催された第125回関東連合産科婦人科学会学術集会で、教室の澤野佳子君(89期)の演題が優秀演題賞として表彰されました。

発表演題は「卵巣成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化を好中球/リンパ球比(N/L比)で予測できるか」で、近年様々ながん種において予後を反映するバイオマーカーになることが報告され注目される末梢血中の好中球/リンパ球比(N/L比)について、術前診断への応用の可能性を検討しました。

成熟嚢胞性奇形腫は頻度の高い良性卵巣腫瘍ですが、稀に悪性転化を生じることが知られています。成熟嚢胞性奇形腫の悪性転化の術前診断は困難なことが多く、その術前診断にN/L比を活用できるかについて検討を行ったものです。悪性転化11例、成熟嚢胞性奇形腫97例の詳細な解析を行い、多変量解析にて末梢血N/L比(4.0以上)が独立した悪性転化の予測因子(P = 0.027, HR = 8.167)であることが示されました。今回、N/L比が卵巣腫瘍の術前診断における良・悪性の鑑別の一助となる可能性を世界に先がけて報告したことが高く評価されました。

同君は、産婦人科1年目(後期研修医)として忙しい毎日のなか、この臨床研究をまとめ上げてくれました。学会当日の素晴らしいプレゼンテーションもさることながら、日々の努力が今回の受賞につながったものと思われます。現在、太田記念病院で研修中の同君の更なる活躍を期待したいと思います。(75期 片岡史夫 )

 

2013.5.10-12
阪埜浩司君(71期)が平成24年度の公益社団法人日本産科婦人科学会 学術奨励賞を受賞

阪埜浩司君(71期)が平成24年度の公益社団法人日本産科婦人科学会 学術奨励賞を受賞 教室の阪埜浩司君(71期)が平成24年度の公益社団法人日本産科婦人科学会学術奨励賞を受賞し、2013年5月10日から12日に札幌で開催された日本産科婦人科学会学術講演会において表彰および受賞講演が行われました。

日本産科婦人科学会学術奨励賞は全国の会員の中から、生殖医学、周産期医学、婦人科腫瘍学、女性のヘルスケアの4部門において卓越した研究業績をあげ、将来を嘱望される会員が表彰される産婦人科領域で最も名誉ある賞である。同君が行ってきた子宮体癌の発癌機構についての研究業績が評価され、婦人科腫瘍学分野での受賞となった。
同君はこれまで大腸癌や子宮体癌を発症しやすい家族性腫瘍であるLynch症候群の解析を行い、欧米と異なる日本人における子宮体癌の表現型を研究してきた。またDNA塩基配列異常によらない選択的な遺伝子機能異常、いわゆるエピジェネティックな異常による発癌機構についても着目し、子宮体癌における新たな発癌機構を提唱してきた。

同君の家族性婦人科腫瘍の研究における業績や子宮体癌発癌におけるジェネティクスとエピジェネティクスという多面的な解析が高く評価された結果であると思われる。今後も同君のさらなる活躍が期待される。

 

2013.5.10-12
木須伊織君(83期)が第65回日本産科婦人科学会学術講演会おいて優秀演題賞を受賞

木須伊織君(83期)が第65回日本産科婦人科学会学術講演会おいて優秀演題賞を受賞 平成25年5月10日から12日に北海道札幌市で行われた第65回日本産科婦人科学会学術講演会において木須伊織君の演題が優秀演題賞として表彰されました。
発表演題は、「世界初の霊長類動物モデルを用いた子宮移植後の妊娠出産例」で、同君は霊長類であるカニクイザルを用いて、同所性子宮自家移植を行い、世界で初めて霊長類での子宮移植後の妊娠・出産に成功しました。
近年の生殖補助医療の進歩により、不妊夫婦が生児を得る機会が増えてきたといえるが、子宮と腟を先天的に欠損する先天性子宮欠損症(Rokitansky症候群)の女性や最近急増している若年性子宮悪性腫瘍(子宮頸癌、体癌)などで子宮摘出を余議なくされる女性は多く存在し、代理懐胎が認められていない本邦においてはこれらの子宮性不妊女性の挙児は不可能である。同君は近年の生殖補助医療技術、臓器移植技術、血管吻合技術、組織保存技術の発展に着目し、これらの技術を統合することで、「子宮移植」による妊孕性再建という新たな生殖補助医療技術の可能性を探るべく研究を行っている。その中でも今回の発表は、解剖生理学的にヒトに類似するカニクイザルを用いた子宮自家移植後の妊娠・出産の成果についてであった。世界でも子宮移植研究は進められているものの、霊長類での子宮移植後の出産の報告は今までに存在しておらず、本成果により子宮移植手術手技に関してはほぼ確立したと考えられ、移植子宮でも妊娠や出産は可能であることが証明された。
子宮移植の臨床応用に関しては倫理面での課題も多く残されており、様々な議論を重ねる必要がある。その上で、社会の状況を鑑みながら研究を進めていくべきと考えられるが、同君の本研究の将来性や発展は多くの子宮性不妊患者に福音をもたらす可能性を秘めており、今後も同君の本研究の進展が多いに期待される。

なお、本研究は東京大学 形成外科・美容外科 三原誠助教らのチーム及び京都大学医学部人間健康科学科 菅沼信彦教授らとの共同研究により行われている。(阪埜浩司記)

 

2013.4.25-27
宮崎薫君(83期)が第86回日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)を受賞

千代田達幸君(83期)がAACR(米国癌学会) Scholar-in-Training Awardを受賞 平成25年4月25〜27日に仙台で開催された第86回日本内分泌学会学術総会において、教室の宮崎薫君(83期)が日本内分泌学会若手研究奨励賞(YIA)を受賞した。本会は、基礎は医薬農理学系から、臨床は内科、小児科、産婦人科、泌尿器科、内分泌外科など、多分野に亘る約7500名の会員から構成される大規模かつ学際的な学会である。  本賞は、応募演題の中から研究内容の独創性などが特に優秀であると評価された10題に対して授与される賞であり、宮崎君の「脱細胞化マトリックスを用いた子宮の再構築」の演題が選ばれた。

子宮の構造不全としては、ロキタンスキー症候群などの先天性子宮・腟欠損に加え、子宮全摘あるいは部分摘出(円錐切除・トラケレクトミー)による後天的な子宮欠損が挙げられる。このような子宮の構造・機能欠損を持つ患者の妊孕性を正常化させることは困難である。本邦では倫理的な問題から代理懐胎は認められていない。ヒトを含めた種々の動物にて子宮移植の試みも各国でなされており、既に昨年5月には、東京大学医学部形成外科学教室と当教室との共同研究により、世界初の霊長類動物モデルを用いた子宮移植後の妊娠出産例が報告されている(Mihara, Kisu, et al., Hum Reprod., 2012)。しかし、心・肺・肝・腎などの臨床的に確立された移植医療においても、それに代わり得る新たな医療として、臓器の再建・再生医療の開発・確立を目指す世界的な潮流がある(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。子宮の移植医療が黎明期にある現状を鑑みても、子宮もその例外ではなく、子宮の再建・再生医療の観点からアプローチする研究は極めて重要である。現在、心臓などの一般臓器の再建・再生医療では、界面活性剤を用いた組織の脱細胞化と、脱細胞化された組織骨格(脱細胞化マトリックス)を用いた組織再生が報告されている(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。そこで本研究では、ラット子宮を大血管付きで摘出しドデシル硫酸ナトリウムを灌流したところ、細胞外マトリックスや微小血管構造を維持したまま細胞が除去され、子宮の脱細胞化マトリックスが完成した。千代田達幸君(83期)がAACR(米国癌学会) Scholar-in-Training Awardを受賞ラット子宮単離細胞などを脱細胞化マトリックスに注入し、培養液を灌流してin vitroで培養したところ、腺上皮と間質を含む子宮内膜の再構築が認められた。更に、ラット子宮角の一部を切除し、脱細胞化マトリックスの一部を欠損部に移植したところ、in vivoでの子宮組織の再生が認められ、その後に自然妊娠が成立した。世界に先駆けてラット子宮の完全な脱細胞化法を確立したことに加えて、その脱細胞化マトリックスが妊孕能を有する子宮を再建し得るポテンシャルを持つことも世界で初めて示した点で、その独創性・新規性、さらには、脱細胞化マトリックスを用いた子宮組織の再構築がヒト子宮再建に向けての有用な基盤技術になりうる、という将来性が評価されて受賞となった(65期 丸山哲夫)。

 

2013.4.6-10
千代田達幸君(83期)がAACR(米国癌学会) Scholar-in-Training Awardを受賞

千代田達幸君(83期)がAACR(米国癌学会) Scholar-in-Training Awardを受賞 米国ワシントンDCに於いて2013年4月6日-10日に開催されましたAACR annual meeting 2013におきまして、教室の千代田達幸君(83期)がScholar-in-Training Awardを受賞しました。

AACRは癌研究における世界最大の学会であり、annual meetingにおいては世界トップレベルの癌研究者が一同に会し、最新の癌研究の成果が発表されます。そのなかで、若手研究者の優秀な発表に対して与えられる賞がScholar-in-Training Awardです。発表演題は「The Hippo pathway component LATS1 phosphorylates MYPT1 to counteract PLK1 and regulate G2 DNA damage checkpoint」であり、同君が大学院時代に行った研究であります。LATS1キナーゼがDNA損傷時にG2チェックポイントに働いていることを明らかにした研究であり、LATS1キナーゼの腫瘍抑制因子としての本態の一部を解明したことが高く評価されました。

なお、授賞式はGrand Hyatt Washingtonに於いて行われました。

 

2013.3.20-23
小野政徳君(79期)宮崎薫君(83期)両君が60th Society for Gynecologic Investigation Annual Scientific Meeting Pfizer Presidential Awardを同時受賞

平成25年3月20日から23日まで米国フロリダ州のオーランドで開催された第60回 Society for Gynecologic Investigation (SGI) Annual Scientific Meetingにおいて、産婦人科学教室の小野政徳君(79期)と宮崎薫君(83期)が、それぞれPfizer President’s Presenter Awardを受賞した。

今年で開催60回目を迎えた伝統ある本会は、女性のリプロダクティブヘルスを中心とする産婦人科学全般を対象にした大規模な米国主導の国際学会であり、米国のみならず世界各国の臨床医家および基礎研究者が一同に会して、成果発表と学際的な情報交換が行われる。特に、生殖内分泌・不妊ならびに周産期学を中心とする母体胎児医学の分野では、質・量ともに学術ポテンシャルの高い演題が毎年目白押しである。そのなかで、今回の本賞は、審査を経て採択された952演題(口演172題・ポスター780題)の中から、さらに研究内容の独創性など特に優秀であると評価された25題に対して授与された。

当教室大学院在籍時に世界に先駆けてヒト子宮筋幹細胞を単離・同定した小野君は、平成23年よりノースウエスタン大学産婦人科学教室のBulun教授の下に留学し、日本での幹細胞の仕事をさらに子宮筋腫の発生メカニズムに迫る研究へと展開している。今回の受賞演題は、同大学での仕事で、Wnt/β-カテニンシステムを介した正常子宮筋細胞と子宮筋腫幹細胞の相互作用が筋腫幹細胞を発生母地とする平滑筋腫瘍の形成に重要な役割を果たしていることを報告した。その重要性とオリジナリティが高く評価されて、受賞につながったと思われる。

今年3月に当教室大学院を卒業した宮崎君は、昨年の日本生殖内分泌学会学術奨励賞に続いての受賞となった。器官・組織を異にする各種の幹細胞であっても、幹細胞に共通の満たすべき要件があり、それらを検証する実験系は確立されていることが多い。しかし、ヒト子宮内膜においては、in vivoで幹細胞特性を効率的に検証するシステムは無かった。同君は、免疫不全マウスでのヒト子宮内膜の再構成系と細胞追跡法を用いて、ヒト子宮内膜の幹細胞特性、特に多分化能をin vivoでアッセイするシステムを開発した。小野政徳君(79期)宮崎薫君(83期)両君が60th Society for Gynecologic Investigation Annual Scientific Meeting Pfizer Presidential Awardを同時受賞 このアッセイ系とその成果が、ヒト子宮内膜幹細胞研究のブレークスルーにつながり得ると評価されたのかもしれない。

写真は、学会期間中の受賞記念パーティーにて、2014年SGI学会長のMoley教授(左)と2013 年SGI学会長のBerga 教授(右)の間に受賞者とそのメンターが並んで撮影されたものである(http://www.sgionline.org/2013-pfizer-award-recipients)。上段は小野君とBulun教授、下段は宮崎君と筆者である。大学院生の時に筆者と一緒に仕事をした両君が、異国の他流試合で偶然にも同時受賞したことは、教室としても、個人的にも、大変嬉しい快挙であった。(65期 丸山哲夫)