ニューストピック[2012]

2014(平成26)年

2014.12.4
太田 邦明 君(90期)・山田 朝子 君(84期)が平成26年度日本生殖医学会学術奨励賞を受賞

 平成26年12月4日・15日の両日に亘って東京で開催された第59回日本生殖医学会学術講演会において、教室の太田邦明君(90期)と山田朝子君(84期)が日本生殖医学会学術奨励賞を受賞した。本賞は、該当する1年間に発表された生殖医学に関する論文の中から、泌尿器科・基礎・産婦人科それぞれの部門における特に優秀な論文に対して授与される賞であり、太田君のヒト運動精子に発現するVacuolar ATPase(V-ATPase)の解析に関する論文(Ota, K, et al., PLoS ONE, 2013)が泌尿器科部門に、また山田君のマウス加齢卵子におけるテロメアの動態の解析に関する論文(Yamada T, et al., Reprod Biol Endocrinol, 2013)が基礎部門に選ばれた。

太田 邦明 君(90期)が日本生殖医学会学術奨励賞を受賞 男性不妊の評価に広く用いられているWHO診断基準は、精子妊孕能を診断するには不完全であり、非侵襲的な精子評価のバイオマーカーが求められている。V-ATPaseは、マウス精子のオルガネラ内部の酸性化に寄与し受精獲得能に関与することがこれまで報告されているが、ヒト精子での報告はない。
 そこで太田君らは、V-ATPaseのサブユニットであるa2Vacuolar ATPase(a2V)に着目し、不妊および健常者の精子および精漿を用いて解析したところ、不妊精子および非運動精子でa2Vの発現が低く、不妊精子において精子a2V発現量を反映する精漿中a2NTDが低いことが判明した。これまで精子機能を制御するとされている候補因子は多数確認されてきたが、いずれも精子への侵襲的診断になるため臨床現場で評価マーカーとして用いることは困難であった。本研究により不妊精子の病因の一端が明らかになった点に加えて、臨床現場において精漿中a2NTDが良好精子選別の新規定量的マーカーになり得るポテンシャルを示した点が評価された。また、impact factorのより高い優れた論文が多数申請されたなかで、同君の論文は、将来の男性不妊治療へ寄与し得るトランスレーショナルリサーチに発展し得る点も評価されて受賞に至った。

山田 朝子 君(84期)が日本生殖医学会学術奨励賞を受賞 卵子の老化は臨床のみならず社会的にもきわめて重要な問題となっている。細胞老化に重要なテロメア長は、体細胞と異なり、卵子では細胞分裂がないため長期間不変であろうと考えられてきた。しかし、これまでの若齢卵と母体加齢卵を比較したマイクロアレイ解析において、母体加齢卵ではテロメアの伸長・維持に働くテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子Tert、ミトコンドリア機能および酸化ストレスに関わる遺伝子群の発現低下が予想されていた(Hamatani T, et al., Hum Mol Genet, 2004)。そこで山田君らは、母体加齢における卵子のテロメラーゼ活性とテロメア長、ミトコンドリアと酸化ストレスに焦点を置き解析を行い、母体加齢によって卵子テロメアが短縮していることをはじめて報告し、さらにその機序としてテロメア伸張酵素Tertの発現低下が考えられること、および酸化ストレスがこれに関与する可能性を発見した。
 これらの知見は卵子の加齢機序解明ならびに治療法の開発につながりうる有意義な研究であると評価されて受賞に至った。
 なお最近では、同賞を平成20年の升田博隆君(76期)、平成21年の長島隆君(78期)、平成24年の内田浩君(73期)および平成25年の宮崎薫君(83期)が受賞している。
(65期 丸山哲夫・71期 浜谷敏生 記)

 
2014.9.13
木須 伊織 君(83期)が第17回日本IVF学会学術集会において学術奨励賞 最優秀演題を受賞

木須 伊織 君(83期)が第17回日本IVF学会学術集会において学術奨励賞 最優秀演題を受賞 平成26年9月13日から14日に大阪で行われた第17回日本IVF学会学術集会において木須伊織君の演題が学術奨励賞 最優秀演題として表彰された。本賞は数多くの応募演題より厳選して選ばれた優秀演題3題のうち、最も優秀な発表を行ったものに対して贈られる賞である。
発表演題は、「非ヒト霊長類動物モデルを用いた子宮移植モデルの開発 〜子宮性不妊患者に対する妊孕性再建技術の可能性を探って〜」である。同君は霊長類であるカニクイザルを用いて子宮移植モデルの開発を継続的に行い、臨床応用の可能性を探り続けているが、この度その研究が評価され、今回の受賞に至った。
 カニクイザルは3-4kgとヒトに比して体格が小さいことから、研究当初はその複雑な手術手技のため、術後に死亡するケースが多く見られた。その多くは術中出血量が多いことに起因すると考え、その対策として自己血貯血を行い、術中に返血することとした。それにより良好なアウトカムが得られるようになり、発表では自己血貯血を行った6件の子宮移植手術(自家移植:3件、同種移植:3件)について報告された。その中には、自家移植後の妊娠出産例や同種移植後の月経回復例も含まれており、これまでの研究成果が大いに評価された。今後もカニクイザルの基礎実験のさらなるデータの蓄積がなされ、将来の子宮移植の臨床応用の可能性を探り続ける同君の活躍が期待される。
(71期 阪埜浩司 記)

 
2014.7.31
長島 隆 君(78期)が日本受精着床学会 世界体外受精会議記念賞を受賞

長島 隆 君(78期)が日本受精着床学会 世界体外受精会議記念賞を受賞 去る平成26年7月31日から8月1日にわたり東京で開催された第32回日本受精着床学会総会・学術講演会において、教室の長島 隆 君(78期)が世界体外受精会議記念賞を受賞した。本会は、基礎と臨床を共に含む幅広い分野の会員からなり、受精ならびに着床に関する研究とその発表を通して、生殖学の発展と人類の幸福に寄与することを目的とした学術的学会である。本会の世界体外受精会議記念賞は、事前審査にて独創的で卓越した研究内容であるとして採択された6演題の中で、特にその発表内容と質疑応答が優秀であると判断された演題に対して与えられ、今回の受賞は、Molecular Endocrinology誌に掲載された同君の論文:Connective Tissue Growth Factor is Required for Normal Follicle Development and Ovulationに関する研究内容に対して授与された。
 CCNファミリーに属するCTGFは、アクチビンを含むTGF-βスーパーファミリーにより制御され、骨形成、脈管形成、組織修復、細胞外基質のリモデリングなど、組織の様々な機能に関与すると考えられている。同君は、卵巣特異的にCTGFを欠損し、その欠損が時空間的に異なる2種類の遺伝子改変マウスを作成し解析することで、卵巣の機能と構造、および妊孕性に果たすCTGFの機能を解明しようと試みた。その結果、同君は、作成した卵巣特異的CTGF欠損マウスでは、顆粒膜細胞における細胞周期調節因子の抑制とアポトーシスの亢進により卵胞の発育不全が生じること、黄体化調節因子の亢進により黄体の過形成が生じること、ならびにプロゲステロン合成調節因子の亢進により血中のプロゲステロン濃度が上昇すること、その結果として妊孕性が著明に低下することを明らかにした。さらに、プロゲステロンにより制御され、排卵時に卵胞壁のリモデリングを調節することで排卵を制御するADAMTS1の発現が低下し、著明に排卵数が減少することを明らかにした。
 本研究は、CTGFがTGF-βとプロゲステロンに制御され、正常な卵胞発育と排卵に必須であることを解明した画期的な基礎研究であるとして評価された。さらに、今回の研究は、CTGFを介したシグナル伝達機構を標的とする、新たな不妊症治療の開発につながるものとして、今回の学術講演会で高く評価された。先の同君のBMPR2に関する画期的な研究成果も含め、同君の今後の活躍が期待される。
(65期 丸山哲夫 記)

 

2014.6.21
第127回関東連合産科婦人科学会学術集会にて産科急変対応シミュレーション講習 優秀チームワーク賞を受賞

第127回関東連合産科婦人科学会学術集会にて産科急変対応シミュレーション講習 優秀チームワーク賞を受賞 平成26年6月21日・22日の両日、東京・都市センターホテルにて第127回関東連合産科婦人科学会学術集会が開催されました。今回は目玉企画として「この春、産婦人科の面白さ体験してみませんか?」というコンセプトで、医学生や初期研修医、専攻医といった若手産婦人科医師への教育を目的とした体験プログラムがありました。内容は婦人科病理診断ドリル、腹腔鏡ハンズオンセミナー、そして産科急変対応シミュレーション講習の3つで、当教室からは90期、91期の平野、安康、井関、沖山、小林、笹山、瀬田、高橋、田中、中川、蛭田の11名が参加しました。その中で産科急変対応シミュレーションは人形や様々な機械やモニターを用いて、5〜7名の各チームの人員がそれぞれ医師リーダー・若手医師・看護師・助産師などの役割分担をし、弛緩出血や子癇発作、子宮内反症、産褥期の心筋梗塞など幾多の緊急事態に合わせてどのような行動ができるか、適切な指示が行えるか、といういわばICLSの産科バージョンのような取組みで、当教室では、6月21日(土)に参加した平野・高橋のグループ、6月22日(日)は安康・井関・瀬田・中川のグループが優秀チームワーク賞を受賞しました。この受賞を糧に、実際の臨床現場でも研鑽を積んでいってほしいと思います。
(79期 山上亘 記)

 

2014.6.14
小林佑介君(82期)が三四会奨励賞を受賞

小林佑介君(82期)が三四会奨励賞を受賞 平成26年6月14日に病院2号館11階大会議室で開催された三四会評議員会において、三四会奨励賞の授賞式が執り行われ、当教室より小林佑介君(82期)が伝統ある同賞を授賞された。三四会奨励賞は慶應義塾大学医学部三四会が臨床医学ならびに基礎医学分野で顕著な業績をあげた者に授賞するものである。
 授賞対象となった小林君の研究テーマ「絨毛癌モデル細胞 iC3-1 (induced
choriocarcinoma cell-1)の樹立、同細胞を用いた絨毛癌発癌機構の解明と絨毛癌幹細胞同定への取組み」において、同君はヒト絨毛外栄養膜細胞から絨毛癌モデル細胞iC³-1を樹立し、さらにそのiC³-1 を用いて、発癌過程に伴いMMPsやEMT関連遺伝子が発現上昇すること、さらにはSOX3遺伝子がその増殖に関与することを証明した。続いて臨床検体においてもSOX3が正常絨毛に比較して強発現しており新規治療標的となりうることやCD44が絨毛癌幹細胞マーカーとなりうる可能性を見いだしてきた。同君が大学院生時代より継続して研究してきたこれらの研究成果は国内外の関連学会からも授賞されており、今回の三四会奨励賞の受賞も加えて、現在米国に留学中の同君の今後の益々の活躍が期待される。
(71期 阪埜浩司 記)

 

2014.5.17
「吉村 泰典君の新たな出発を祝う会」開催される

「吉村 泰典君の新たな出発を祝う会」開催される 2014年5月17日(土)18時より、ホテルニューオータニ鳳凰の間において、「吉村 泰典君の新たな出発を祝う会」が催されました。
吉村 泰典君(54期)は、この3月末日をもって当教室の教授を退任し、慶應義塾大学の名誉教授となりました。退任後も第2次安倍内閣の内閣官房参与として少子化問題を中心に生殖医療を含めた、「明日の日本」を政策として支える任についている一方で、日本生殖医学会、日本産科婦人科内視鏡学会の理事長を勤めるなど、あいかわらずの八面六臂の活躍をしております。
 当教室主任の青木 大輔教授(61期)および教室同窓会会長の北井 啓勝君(53期)が発起人となり、19年の長きにわたり、教室を牽引してこられた吉村君の新しいステージでの活躍を祈るとともに、ひとつの節目として、これまで吉村君および当教室がお世話になってきた方々をお迎えして会が行われました。
 有働 由美子NHKチーフアナウンサーの司会のもと、はじまった会は、森 まさこ先生(女性活力・子育て支援大臣)、横倉 義武先生(日本医師会会長)、小西 郁生先生(日本産科婦人科学会理事長)、戸山 芳昭先生(慶應義塾常任理事)からご祝辞を頂戴し、末松 誠先生(本学医学部学部長)の乾杯のご発声を皮切りに、来場者500名を数え、大盛況となりました。文字通り日本中からのご来場でありましたので、会場から溢れんばかりでした。
 慶應義塾大学ライトミュージックソサエティによる、魅了的な音色を楽しみ、ニューオータニの味に舌鼓を打ちつつ、あちらこちらでお懐かしい方々との旧交を温めながら、数々の想い出話に花が咲いておりました。そんな中、教室が用意した吉村名誉教授の退任記念ビデオが会場に映し出されると、いったん会場は静まりましたが、吉村君の若かりし頃の姿が映ったときなどは、ふたたび会場がどよめいておりました。



 瞬く間に時間は経ち、吉村君の令夫人吉村 陽子先生(54期:藤田保健衛生大学医学部 形成外科 教授)の謝辞を受け、吉村君がそれぞれの大学の教授として、長らく別居されながらも、心の支えとして寄り添いあう奥様へ花束をお渡しになられたシーンは、場内のフラッシュも格別多くなりました。そのままマイクを受取り、吉村君本人の謝辞となり、大盛会の中、閉会となりました。
 当教室の誇りでもあります吉村名誉教授には、今後も我が国の医療のために、ますますご活躍いただきたいと教室員一同、同窓会員一同感じた会となりました。
 

2014.4.18
長島隆君(78期)第66回日本産科婦人科学会学術講演会 優秀論文賞受賞

長島隆君(78期)第66回日本産科婦人科学会学術講演会 優秀論文賞受賞 去る2014年4月18日から20日に東京で開催された第66回日本産科婦人科学会学術講演会にて、教室の長島隆君が優秀論文賞を受賞した。本賞は、周産期医学、婦人科腫瘍学、生殖医学、女性ヘルスケアの各部門において、産婦人科学の発展に寄与する優れた研究成果をもたらし、筆頭著者として論文を発表した産婦人科専門医に対して贈られる。今回は、同君が2013年6月号のThe Journal of Clinical Investigation誌に発表した「BMPR2 is required for postimplantation uterine function and pregnancy maintenance」が周産期部門の優秀論文に選出された。同君は、BMP蛋白の受容体の1つであるBMPR2が子宮特異的に欠損する遺伝子改変マウスを作成・解析し、子宮内胎児発育遅延と常位胎盤早期剥離を来すことを発見した。また、BMPR2が、CCND3を介して子宮内膜の増殖と分化を制御するのみならず、VEGFsとANGPTsによる子宮ラセン動脈の形成と安定化に寄与すること、さらに、子宮ラセン動脈の再構築に必須である子宮特異的NK細胞の分化、ならびに心房性ナトリウム利尿ペプチドを活性化するプロテアーゼであり、心臓以外にも妊娠子宮で発現して子宮ラセン動脈のリモデリングに関与するCORINの発現も制御していることを明らかにした。本論文は、子宮ラセン動脈の再構築メカニズムを解明するのみならず、常位胎盤早期剥離に対して、その発生メカニズムの一端を解明したものとして高く評価された。
(65期 丸山哲夫 記)

 

2014.4.17
内田浩君(73期)日本産科婦人科学会学術奨励賞、日本内分泌学会研究奨励賞を受賞

内田浩君(73期)日本産科婦人科学会学術奨励賞、日本内分泌学会研究奨励賞を受賞 産婦人科学教室専任講師の内田浩君(写真左)が平成26年4月17日〜20日に開催された第66回日本産科婦人科学会(東京、小西郁生理事長[写真右])において学術奨励賞を、4月25日〜27日に行われた第87回日本内分泌学会(福岡)で研究奨励賞をそれぞれ受賞した。
 日本産科婦人科学会学術奨励賞は「卓越した研究業績をあけ将来を嘱望される若手会員(応募の時点で46歳未満)」、日本内分泌学会研究奨励賞は「原則として国内において、卓越した研究業績を挙げた45歳以下、会員歴10年以上の会員」に授与される賞である。いずれの賞も単一の研究ではなく、継続された研究業績が審査対象となるもので、同君が当教室に帰室してから10年余りの間に積み重ねて来た研究全体が評価されたものである。
 妊娠にチャレンジする年齢が上がって来ていることからも不妊症カップルは増加を続けており、我が国の少子化の原因のひとつとなっている。体外受精をはじめとする生殖補助医療の技術革新は高齢女性の妊娠の福音となっているものの、受精技術の飛躍的向上に比較して、受精卵が子宮に根付き妊娠が成立する「着床」に関しては、治療成績が思うように向上していない。最大の原因は、着床が子宮というブラックボックスの中で起こっており、倫理的にも技術的にも研究アプローチが難しくヒト着床の機序解明が進んでいないためである。
 同君はin vitroの実験系を用いて、このヒト着床における子宮内膜上皮細胞(受精卵がはじめに接触する母体側の細胞)の振る舞いの研究を一貫して行っており、受精卵と子宮内膜との「出会い」から「受入れ」までの流れにおいて、分化・接着・運動・増殖といった細胞の基本的機能の複合的動態によるものという新しいモデル図を描いた。その新しいモデル図の鍵を握るタンパク質を解き明かすと同時に、着床補助療法としての卵巣ホルモンに代替しうる新規薬剤をも明らかにした。
 「ヒト着床における子宮内膜上皮細胞動態の解明」と題された、これらの一連の研究業績の独創的で確固たるアプローチや、新たに描かれたモデル図のストーリー性が評価されただけでなく、全て本学の研究室で行われたという国内独自の研究であることも高く評価され受賞に至った。
 同君のモデル図には、本人も自ら語っていることであるが、まだ解き明かされていない興味深い細胞の独特な動態があり、今後もまだまだ同君の「着床」という神秘的な生命現象との対話は続くと思われ、その今後の成果が楽しみである。
(65期 丸山哲夫 記)

 

2014.3.16
木須伊織君(83期)が第9回日本生殖再生医学会において学術奨励賞を受賞

木須伊織君(83期)が第9回日本生殖再生医学会において学術奨励賞を受賞 平成26年3月16日に大阪で行われた第9回日本生殖再生医学会において木須伊織君の演題が学術奨励賞として表彰された。
発表演題は、「霊長類動物モデルを用いた子宮移植技術の開発〜子宮性不妊症に対する治療の臨床応用に向けて〜」である。同君は霊長類であるカニクイザルを用いて継続的に子宮移植の基礎実験を行い、臨床応用の可能性を探り続けているが、これまでの積み重なる業績が評価され、今回の受賞に至った。
 近年の生殖補助医療の進歩により、不妊夫婦が生児を得る機会が増えてきたといえるが、子宮と腟を先天的に欠損する先天性子宮腟欠損症(Rokitansky症候群)の女性や最近急増している若年性子宮悪性腫瘍(子宮頸癌、体癌)などで子宮摘出を余議なくされる女性は多く存在し、代理懐胎が認められていない本邦においてはこれらの子宮性不妊女性の挙児は不可能である。同君は近年の生殖補助医療技術を始めとする様々な技術の発展に着目し、これらの技術を統合することで、「子宮移植」による妊孕性再建という新たな生殖補助医療技術の可能性を探るべく研究を行い続けている。
また、子宮移植は技術的にたとえ可能であっても、その臨床応用に関しては倫理面での課題も多く残されている。子宮移植に内包される倫理的・社会的問題を明瞭化し、これらに対する十分な議論が必要である。海外では子宮移植が臨床研究として行われ始めており、わが国においてもその施行に関して審議しなければならない社会的状況がいずれ到来することも予想される。このような世界的流れを鑑み、わが国における方向性を見極めるために2014年3月に「日本子宮移植研究会」が設立された。子宮移植に対して論議を深める場が提供されるとともに、医療者間の相互理解ならびに一般社会への情報提供と社会的コンセンサスの形成がなされることが期待される。同君は同研究会の代表幹事と子宮移植プロジェクト・チームの中核を務め、技術的視点からだけでなく、倫理面からも子宮移植研究の臨床応用の可能性を探っており、今後も同君のわが国における子宮移植の臨床応用へ向けた取り組みが多いに期待される。
(71期 阪埜浩司 記)

 

2014.3.6
第31回生命倫理セミナー「子宮移植は可能か?」が慶應大学信濃町キャンパスで行われました

第31回生命倫理セミナー「子宮移植は可能か?」が慶應大学信濃町キャンパスで行われました 平成26年3月6日に慶應大学信濃町キャンパス東校舎講堂で第31回生命倫理セミナー「子宮移植は可能か?」が行われました。
 子宮移植は、生まれつき子宮がない女性や子宮腫瘍などにより子宮を摘出された女性に対して、その夫婦が子どもを得るための1つの治療の選択肢の可能性として、最近考えられるようになってきている技術です。海外では臨床研究として臨床応用が行われ始めましたが、子宮移植には技術的な面だけでなく、倫理的問題も多く内包されております。その生命倫理が抱える問題点を整理すべく、医学教育統括センター主催のもと、生殖倫理に関して大変ご高名な京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻の菅沼信彦教授を慶應大学信濃町キャンパスにお招きし、約70名の出席者のもと、本セミナーが開催されました。
 本セミナーでは、最初に当科の木須先生が子宮移植の医学的背景や子宮移植研究の現状について講演し、続いて菅沼先生より子宮移植に纏わる生殖倫理を考慮した視点から、子宮移植の将来の可能性について講演頂きました。会場には、医師やコメディカル(看護師、薬剤師など)だけでなく、医学生、看護学生、一般の方などの多くの方々にお集まり頂き、会場では貴重なご意見が飛び交い、大変有意義なセミナーとなりました。
(71期 阪埜浩司 記)