ニューストピック[2015]

2015(平成27)年

2015.12.1
第30回日本女性医学学会学術集会において太田邦明君(90期)が平成27年度日本女性医学会 学会奨励賞を受賞
第30回日本女性医学学会学術集会において太田邦明君(90期)が平成27年度日本女性医学会 学会奨励賞を受賞  平成27年11月7〜8日にメルパルク名古屋にて第30回日本女性医学学会学術集会が開催され、当教室の太田邦明君(90期)が学会奨励賞を受賞し、11月8日に贈呈式が行われ、受賞記念講演を行った。
 本賞は、女性医学分野における基礎的、臨床的研究に対して継続して優れた研究業績をあげた者の中から基礎研究部門・臨床研究部門で各1名に授与される。太田君の研究業績が高く評価され、基礎研究部門での受賞となった。
 骨代謝機構における破骨細胞-骨芽細胞間にはカップリングファクターを介したクロストークが必須である。一方、加齢に伴うTGFβの減少により骨芽細胞機能が低下する。しかし、破骨細胞-骨芽細胞間クロストークへのTGFβの関与は不明であった。今回、同君の雌性骨形成過程に関する研究により、破骨細胞-骨芽細胞間クロストークにおいて、TGFβが骨芽細胞分化・遊走能を制御するカップリングファクターとして重要な役割を担うことを見いだした。これまで閉経後骨粗鬆症の主たる発症起因はエストロゲンの低下による骨代謝異常と考えられてきたが、新たに加齢によるTGFβの低下が閉経後骨粗鬆症の発症に関与している可能性を新たに指摘した点が評価された。
 第30回日本女性医学学会学術集会において太田邦明君(90期)が平成27年度日本女性医学会 学会奨励賞を受賞この学会奨励賞は当教室から2007年に高松潔君(65期)、2012年に牧田和也君(66期)が臨床研究部門で各々受賞している。女性医学分野の研究は当教室の伝統的なテーマの1つであるが、基礎研究部門での受賞は太田君が初めてであり、さらなる進展が期待される。
(65期 丸山哲夫 記)
 
2015.11.16
第30回日本女性医学学会学術集会において、飯田美穂君(87期)が優秀演題賞を受賞
第30回日本女性医学学会学術集会において、飯田美穂君(87期)が優秀演題賞を受賞  平成27年11月7日〜8日に、第30回日本女性医学学会学術集会がメルパルク名古屋において開催され、飯田美穂君(87期)が優秀演題賞を受賞した。同君の演題は「閉経後女性におけるメタボリック症候群の血漿メタボローム解析:鶴岡メタボロームコホート研究」と題した発表で、近年脚光を浴びているメタボローム解析を用いて、閉経後女性に急増するメタボリック症候群にアミノ酸代謝異常が強く関わっていることを、日本人において初めて報告した。肥満や糖尿病、心血管疾患とアミノ酸代謝の関連はこれまでにも報告されているが、閉経後女性に着目した研究は前例がなく、また先行研究の多くが欧米諸国の肥満集団を対象にしていることから、本邦の閉経後女性における検証の結果が高く評価された。アミノ酸の中でもとりわけ有意性の高かった分枝鎖アミノ酸は、肥満改善作用や筋力向上作用などの利点が注目されているが、同君らの研究成果により、メタボリック症候群を促す有害性をもつ可能性が示唆され、個人の体型やインスリン感受性に応じた摂取量の見直しの必要性が示された。
 女性医師として、育児・診療・研究を両立する飯田君の今後の益々の活躍を期待している。
(71期 阪埜浩司 記)
 
2015.10.26
第130回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において、宮内安澄君(88期)が最優秀演題賞を受賞
第130回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において、宮内安澄君(88期)が最優秀演題賞を受賞  平成27年10月24日〜25日の日程で幕張メッセ国際会議場において開催された第130回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において、宮内安澄君(88期)が婦人科分野の最優秀演題賞を受賞した。同君の演題は「鏡視下手術教育に役立てることを目的とした女性骨盤「レイヤー解剖」アプリケーション作成の試み」と題した発表で、その秀逸な内容とプレゼンテーションが評価され、受賞に至った。内容は、固定遺体に対して新たな剖出方法を施し、3Dカメラによって撮影したデータを元に、骨盤内臓器と神経や血管の走行との関係が理解しやすい臨床解剖教育ツールを作成し、これを活用して安全な鏡視下手術に役立てるというものである。近年、鏡視下手術が、入院期間の短縮や、術後疼痛が少ないといった長所により普及が進んでいるが、一方で開腹手術とは異なる視野やパワーソースによる近接臓器への障害といった注意点も存在する。このような鏡視下手術の短所の克服には臨床解剖を熟知する必要があると考えられる。今回、臨床解剖を理解しやすいアプリケーションを開発し、臨床解剖教育に寄与したことが評価された。
 これまでにも我々のグループでは、3D画像を用いた臨床解剖教育ツールを作成してきた(婦人科腫瘍研究室 感染制御部門のページを参照)が、今回の受賞を契機に更なる教育ツールの開発が期待される。
(80期 仲村勝 記)
 
2015.8.3
小林佑介君(82期)の研究成果が新聞各紙で報道
 小林佑介君(82期)の研究成果が平成27年6月24日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Clinical Cancer Research」オンライン版で公開され、それに伴い慶應義塾よりプレスリリースされた。

◆慶應義塾プレスリリース:
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2015/osa3qr000000xyec.html

 6月25日には新聞各紙が一斉に報道し、同君の研究成果への注目度の高さがうかがわれた。同君が今回報告した論文 ”Mevalonate pathway antagonist inhibits proliferation of serous tubal intraepithelial carcinoma and ovarian carcinoma in mouse model” は、同君が2012年4月より留学していたJohns Hopkins大学で精力的に取り組んできたプロジェクトの一つで、脂質異常症治療薬スタチンが卵巣癌の発生や進行を抑制しうることをマウスモデルで明らかにしたものである。スタチンの抗腫瘍効果については近年他癌腫で注目されてきているが、卵巣癌においてはエビデンスのあるデータは報告されてきておらず、今回の同君の研究成果により卵巣癌においてもその効果が脚光を浴びることとなった。今後は臨床試験に向けて、コレステロール合成経路が活性化している症例の抽出方法など更なる基礎研究が必要となるが、今後の同君の益々の活躍と研究成果に期待したい。
(71期 阪埜浩司 記)
 
2015.7.13
丸山哲夫君(65期)が平成27年度北里賞を受賞
丸山哲夫君(65期)が平成27年度北里賞を受賞し 平成27年6月12日(金)北里講堂で行われた北里記念式において、当教室の丸山哲夫君(65期)が、平成27度北里先生記念三四会賞(北里賞)を受賞し受賞講演を行った。
 慶應義塾大学初代医学部長・北里柴三郎先生を記念する北里賞は、慶應義塾大学医学部における最高の学術賞であり、国際的にも評価される研究業績を挙げ、且つ今後の一層の発展、活躍が期待され、次世代を担い得る三四会員に与えられる賞である。基礎研究、および臨床への展開研究における優れた業績に対して授与される。丸山君の受賞業績は「雌性生殖器官の幹細胞システムの解明と再生医学への展開」である。
詳細と関連記事は以下のURLを参照されたい。

◆慶應義塾大学医学部新聞・平成27年6月号1・2面
1面 http://www.obgy.med.keio.ac.jp/08topics/pdf/20150620_1.pdf
2面 http://www.obgy.med.keio.ac.jp/08topics/pdf/20150620_2.pdf

◆慶應義塾大学医学部・医学研究科HP:
http://www.med.keio.ac.jp/information/2015/rk47ce000000j0a7.html

◆慶應義塾大学HP/Keio Research Highlights:
http://research-highlights.keio.ac.jp/article/31/lab-grown-uterus-could-reverse-infertility
 
2015.6.21
第129回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において菅裕佳子君(87期)が最優秀演題賞を受賞
第129回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において菅裕佳子君(87期)が最優秀演題賞を受賞 平成27年6月20日〜21日の日程で都市センターホテルにおいて開催された第129回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において、菅裕佳子君が最優秀演題賞を受賞した。同君の演題は「妊娠を契機に発見された浸潤子宮頸癌症例の検討」で、15例の頸癌合併妊娠症例について、子宮頸癌検出の契機となった細胞診スクリーニングの時期、確定診断となった組織診の時期、胎児が生存可能な時期までの妊娠継続の有無についてまとめた。この結果、妊娠中は子宮頸癌の診断が困難な場合があり、特に最終診断に円錐切除術が必要となる症例では妊娠中断を選択できる妊娠21週までの時間的余裕が少なくなることを解析し、初期スクリーニングと、迅速な組織診断の実施の必要性を訴えた。妊娠合併子宮頸癌の取り扱いに決まったガイドライン等はなく、実際に患者を前にして苦慮するのが実情である。今回多数の症例をもとに、早期診断の重要性など新たな情報を発信できたことが高く評価された。菅裕佳子君は、2児の母親として育児と臨床を両立して産婦人科医として診療にあたっている。菅君の今後の益々の活躍を期待するとともに、今回の受賞が、家庭と職場を両立して頑張るママさん達への応援として届くことを願っています。
(74期 岩田 卓 記)
 
2015.6.4
木須伊織君(83期)がアジア・オセアニア産婦人科連合のYoung Scientist Awardを受賞し、第24回アジア・オセアニア産婦人科学会にて表彰
木須伊織君(83期)がアジア・オセアニア産婦人科連合のYoung Scientist Awardを受賞し、第24回アジア・オセアニア産婦人科学会にて表彰 平成26年6月3日から6日にマレーシア(クチン)で開催された第24回アジア・オセアニア産婦人科学会において木須伊織君がYoung Scientist Awardを受賞し、同学会のOpening Ceremonyにてアジア・オセアニア産婦人科連合から表彰された。本賞はアジア・オセアニア産婦人科学会の国際機関誌であるJournal of Obstetrics and Gynaecology Researchに2013年から2014年の間に掲載された論文の中から、最も優秀な論文であると評価された筆頭著者1名のみに対して、アジア・オセアニア産婦人科連合より贈られる大変名誉ある賞である。この度、同君が発表した「Uterus allotransplantation in cynomolgus macaque: a preliminary experience with non-human primate models」が選ばれ、今回の受賞に至った。当教室としては初めての快挙である。
 近年の生殖補助医療の進歩により、不妊夫婦が生児を得る機会が増えてきたといえるが、子宮や腟を先天的に欠損する先天性子宮腟欠損症(Rokitansky症候群)の女性や最近急増している若年性子宮悪性腫瘍などで子宮摘出を余議なくされる女性は多く存在し、代理懐胎が認められていない本邦においてはこれらの子宮性不妊女性の挙児は不可能である。同君はその解決策として「子宮移植」という新たな生殖補助医療技術及び移植医療技術を発案し、子宮性不妊女性が子どもを得られるようにこれまで研究を進めてきた。
 同君は子宮移植の臨床応用を目指すため、AMED(日本医療研究開発機構)の事業の一環として、動物実験で非ヒト霊長類動物であるカニクイザルを用いて子宮移植実験を行っている。慶應大学医学部キャンパス内ではカニクイザルの飼育、手術や管理は行えないため、滋賀医科大学の動物実験センターまで幾度も足を運び、実験をこれまで継続的に行うことができているのは同君の努力の結晶ともいえる。それだけではなく、カニクイザルを用いた侵襲の高い複雑な手術、術中術後管理、免疫抑制剤のコントロールなどはヒトと異なり、非常に困難を極める。それにも関わらず、同君はそれらの課題を一つずつ解決しながら、これまで本研究を飛躍的に進め、今回の受賞は同君のこれまでの苦労や多くの業績が高く評価された。これまで多岐に渡る領域の先生方に協力を頂きながら研究を進めているが、現在はカニクイザルにおいて生体間の子宮移植モデルの作製のみならず、将来的な脳死ドナーからの臓器提供も見据えて、脳死ドナーからの子宮移植モデルの作製にも取り組み、移植後の月経回復にも成功している。
 同君の本研究により、近い将来我が国における子宮移植の臨床応用も十分に考えられ、子宮性不妊女性に大きな福音をもたらすことが期待される。今後も同君の我が国における子宮移植の臨床応用へ向けた取り組みに注目したい。
(71期 阪埜浩司 記)
第24回アジア・オセアニア産婦人科学会にて表彰
 
2015.5.20
国際生殖医学会・日本生殖医学会ジョイント総会において升田博隆君(76期)が学会賞を受賞
国際生殖医学会・日本生殖医学会ジョイント総会において升田博隆君(76期)が学会賞を受賞 平成27年4月26日から29日までの4日間、パシフィコ横浜においてIFFS/JSRM International Meeting 2015が開催された。この学会はInternational Federation of Fertility Societies (IFFS)と日本生殖医学会(Japan Society for Reproductive Medicine : JSRM)の合同開催となった国際会議であり、この学会の学会賞は事前に抄録より厳選された候補演題の中から、当日の口頭発表のクオリティによってさらに厳正に審査され、特に優秀と判断された発表に対して授与される価値あるAwardである。当教室の升田博隆君(76期)は” Significance of endometrial stem/progenitor cells in women with endometriosis”と題した発表で、その秀逸な内容とプレゼンテーションが評価され、受賞に至った。
国際生殖医学会・日本生殖医学会ジョイント総会において升田博隆君(76期)が学会賞を受賞 本研究は、同君が留学先のオーストラリアのMonash大学で精力的にこなしてきた研究のひとつで、子宮内膜症患者と非内膜症患者の腹水、月経血、末梢血を比較することで、子宮内膜幹細胞がどのように子宮内膜症発症に寄与していくのかというテーマに切り込んでいる。子宮内膜症患者群の腹水では、子宮内膜間葉系幹細胞が有意に多く存在することを明らかにしており、子宮内膜症と子宮内膜幹細胞との直接的な関係を世界に先駆けて示した報告であり、近年提唱されている子宮内膜症発症の「幹細胞仮説」を初めて裏付けたことが高く評価された。産婦人科医としては日々の診療でよく目にするポピュラーな疾患でありながら病因論に決着がついていない子宮内膜症の発症機序に迫る本研究は、新規治療戦略も含めた今後のさらなる伸展が期待されるものである。
 なお、同君は平成27年4月9日から12日の4日間にわたり開催された第67回日本産科婦人科学会学術講演会(パシフィコ横浜)のInternational Sessionにおいても同様の内容にてポスター発表を行い、Good Poster Awardを受賞した。
(73期 内田 浩 記)
 
2015.5.18
浜谷敏生君(71期)が Scientific Reports の Editor に就任
 当科講師の浜谷敏生君(71期)が 2015年5月より Scientific Reports (Sci Rep) のEditorial board member (Editor) に加わりました。
(http://www.nature.com/srep/eap-ebm/index.html#molecularbiology#ToshioHamatani)

 Sci Repは自然科学・臨床医学の全分野を取り扱う電子ジャーナルです。技術的妥当性があり、各分野の専門家が関心を示すような原著研究論文をできるだけ迅速にオープンアクセスで提供することを目的に、Nature Publishing Groupが2011年に発刊した総合科学誌 (Impact factor 5.078) です。

 Editorは、投稿論文に対して査読者を決定し、論文の採否を判断し、雑誌の質を維持することに寄与しなければなりません。多大な労力を要しますが、教室内でこれから英文投稿を考えている先生方に浜谷君が有用なアドバイスをしてくれることを期待しております。
浜谷敏生君(71期)が 2015年5月より Scientific Reports (Sci Rep) のEditorial board member (Editor) に加わりました
 
2015.5.18
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において宮崎 薫君(83期)が優秀論文賞(生殖医学部門)を受賞
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において宮崎 薫君(83期)が 優秀論文賞(生殖医学部門)を受賞 平成27年4月9日から12日までの4日間、パシフィコ横浜において第67回日本産科婦人科学会学術講演会が開催された。平成21年度より設置された優秀論文賞は、周産期医学、生殖医学、婦人科腫瘍学、女性医学の4部門において、年間で国内外の科学雑誌に掲載された論文のうち、厳正な審査を経て最も優秀と判断された論文の発表者に授与される賞である。この優秀論文賞のうち、生殖医学部門において、当教室の宮崎薫君(83期)の論文 Partial regeneration and reconstruction of the rat uterus through recellularization of a decellularized uterine matrix(Miyazaki K and Maruyama T, Biomaterials, 2014)が選出され受賞となった。子宮の構造不全としては、ロキタンスキー症候群などの先天性子宮・腟欠損に加え、子宮全摘あるいは部分摘出(円錐切除・トラケレクトミー)による後天的な子宮欠損が挙げられる。このような子宮の構造・機能欠損を持つ患者の妊孕性を正常化させることは困難である。本邦では倫理的な問題から代理懐胎は認められていない。ヒトを含めた種々の動物にて子宮移植の試みも各国でなされており、既に今年2月には、子宮移植後に初めてヒトでの分娩例が報告された(Brännstrom M et al., Lancet 2015)。しかし、心・肺・肝・腎などの臨床的に確立された移植医療においても、それに代わり得る新たな医療として、臓器の再建・再生医療の開発・確立を目指す世界的な潮流がある(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。子宮の移植医療が黎明期にある現状を鑑みても、子宮もその例外ではなく、子宮の再建・再生医療の観点からアプローチする研究は極めて重要である。現在、心臓などの一般臓器の再建・再生医療では、界面活性剤を用いた組織の脱細胞化と、脱細胞化された組織骨格(脱細胞化マトリックス)を用いた組織再生が報告されている(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。そこで本研究では、ラット子宮を大血管付きで摘出し、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムを灌流したところ、細胞外マトリックスや微小血管構造を維持したまま細胞が除去され、子宮の脱細胞化マトリックスが完成した。ラット子宮単離細胞などを脱細胞化マトリックスに注入し、培養液を灌流してin vitroで培養した結果、腺上皮と間質を含む子宮内膜の再構築が認められた。更に、ラット子宮角の一部を切除し、脱細胞化マトリックスの一部を欠損部に移植することで、in vivoでの子宮組織の再生が認められ、その後に自然妊娠が成立した。世界に先駆けてラット子宮の完全な脱細胞化法を確立したことに加えて、その脱細胞化マトリックスが妊孕能を有する子宮を再建し得るポテンシャルを持つことを世界で初めて示した。その独創性・新規性、さらには、脱細胞化マトリックスを用いた子宮組織の再構築がヒト子宮再建に向けての有用な基盤技術になりうる、という将来性が評価されて受賞となった。
(65期 丸山哲夫 記)
 
2015.5.18
第62回Society for Reproductive Investigation (SRI) Annual Meetingにおいて宮崎 薫 君(83期)がPfizer President's Presenter Awardを受賞
 平成27年3月25〜28日に米国カリフォルニア州のサンフランシスコで開催された第62回Society for Reproductive Investigation (SRI) Annual Meetingにおいて、教室の宮崎 薫 君(83期)がPfizer President’s Presenter Awardを受賞した。

 今年で62回目を迎えた伝統ある本会は、女性のリプロダクティブヘルスを中心とする産婦人科学全般を対象にした大規模な米国主導の国際学会であり、米国のみならず世界各国の臨床医家および基礎研究者が一同に会して、成果発表と学際的な情報交換が行われる。特に、生殖内分泌・不妊ならびに周産期学を中心とする母体胎児医学の分野では、質・量ともに学術ポテンシャルの高い演題が毎年目白押しである。そのなかで、今回の本賞は、審査を経て採択された1047演題(口演 160題・ポスター 887題)の中から、さらに研究内容の独創性など特に優秀であると評価された25題に対して授与された。

 子宮の構造異常や機能欠損による子宮性不妊患者の妊孕能を改善させる事は困難である。本邦では倫理的な問題から代理懐胎は認められていない。ヒトを含めた種々の動物にて子宮移植の試みも各国でなされており、既に今年2月には、子宮移植後に初めてヒトでの分娩例が報告された(Brännstrom M et al., Lancet 2015)。しかし、心・肺・肝・腎などの臨床的に確立された移植医療においても、それに代わり得る新たな医療として、臓器の再建・再生医療の開発・確立を目指す世界的な潮流がある(Ott, H.C. et al., Nat. Med., 2008など)。子宮の移植医療が黎明期にある現状を鑑みても、子宮もその例外ではなく、子宮の再建・再生医療の観点からアプローチする研究は極めて重要である。以前にわれわれは、脱細胞化したラット子宮のマトリックス(decellularized uterine matrix; DUM)がin vivoで子宮組織再生を促進する事を報告した(Miyazaki K & Maruyama T, Biomaterials, 2014)。しかしこの研究では近交系ラットを用いたため、DUMの免疫原性は不明であった。そこで本研究では、まずSprague-Dawleyラット(SD)子宮に界面活性剤を灌流してDUMを作成した。次に、Wistar系統のレシピエントラットの子宮角を部分切除し、SD由来DUMあるいは子宮同種移植片(uterine allograft; UtA)を欠損部に移植した。1週後と5週後に移植部位の再生組織を切除し、リアルタイムPCRを用いてそれぞれ急性拒絶反応マーカー遺伝子、ホルモン受容体遺伝子発現の定量解析を行った。移植1週後、UtA移植部位には著明な炎症細胞浸潤を認め、急性拒絶反応マーカーCD3、CD8、Nos2の発現上昇が認められたのに対し、DUM移植部位では発現がほとんど認められなかった。移植5週後、DUM移植部位には子宮内膜と筋層を含む子宮組織が再生していたが、UtA移植部位には線維化が認められ、正常な組織の構造を有する子宮の再生に至らなかった。ホルモン受容体であるEsr1、Esr2、Pgr各遺伝子発現量はUtAと比較してDUMにおいて有意に高値であり、DUM移植部位における構造的・機能的な子宮再構築が示唆された。これらの結果から、同種異系移植におけるDUMの安全性を示唆するデータの1つを世界に先駆けて示した。その独創性・新規性、さらには、将来的な臨床応用に際して、子宮性不妊患者に別人のDUMを移植する事により機能的な子宮再生を行う戦略の可能性という将来性が評価されて受賞となった。

 写真は、学会期間中の受賞記念パーティーにて、2016年SRI学会長のTaylor教授(左)と2015年SRI学会長のBulun教授(右)の間に宮崎君とメンターである筆者が並んで撮影されたものである。 宮崎君は、2013年に続き2度目の本賞の受賞となった。また、同君は本学会からそのままシカゴへ移動し、4月1日よりBulun教授の研究室(ノースウエスタン大学産婦人科学教室)にポスドクとして現在勤務している。
(65期 丸山哲夫 記)

 
2015.4.22
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において赤羽智子君が優秀演題賞を受賞
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において赤羽智子君が優秀演題賞を受賞 第67回日本産科婦人科学会学術講演会が2015年4月9日から12日にわたりパシフィコ横浜にて開催され、当教室の赤羽智子君(特任助教)が優秀演題賞として表彰された。発表演題は「BRCA1/2遺伝子生殖細胞変異例における良性卵管上皮細胞のp53蛋白発現とTP53遺伝子変異の意義」である。
 本演題はBRCA1/2遺伝子変異保持者に対するリスク低減卵巣卵管切除術(Risk-reducing salpingo-oophorectomy:RRSO)例における卵管上皮細胞のp53蛋白発現とTP53遺伝子変異解析から、high-grade serous carcinoma(HGSC)の発癌について検討したものである。
 当教室ではBRCA1/2遺伝子変異保持者に対して、倫理委員会の承認と慎重な適応に基づいてRRSOを施行している。また倫理委員会の承認のもと、手術施行時に採取された試料を慶應義塾大学産婦人科バイオバンク(Keio Women’s Health Biobank:KWB)で保管しており、本研究はKWBのサンプルを用いた成果である。
 同君は臨床・衛生検査技師、細胞検査士、国際細胞検査士およびゲノムリサーチコーディネーター等の資格を有し、博士(医学)として研究分野でも業績をあげている。今後は医療系学部が揃った都市型総合大学である慶應義塾において、若手研究者の教育に貢献することも期待している。
(74期 平沢 晃 記)
 
2015.4.14
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において植木有紗君(83期)が優秀演題賞を受賞
第67回日本産科婦人科学会学術講演会において植木有紗君(83期)が優秀演題賞を受賞 平成27年4月9日から12日の4日間にわたり、第67回日本産科婦人科学会学術講演会がパシフィコ横浜において開催され、植木有紗君の演題が優秀演題賞として表彰された。発表演題は「癌胎児性蛋白IMP3発現は癌肉腫の予後と相関し、エピジェネティックな制御を受ける」で、同君が大学院博士課程の時より研究をつづけた研究内容を発展させたものである。
IMP3は胎生期の諸臓器および癌で発現する癌胎児性蛋白であり、様々な癌腫において悪性度や予後との相関が報告されている注目の分子である。同君はマウス肉腫モデルを用いてImp3の発現を遺伝子操作し、in vitroにおいて足場非依存性の増殖能、接触増殖阻止能の喪失、anoikisからの回避に関わり、in vivoにおける腫瘍形成能にも寄与する事を報告している。またエピジェネティクス関連薬剤としてDNMT1阻害剤およびHDAC阻害剤の添加により、マウス肉腫モデルにおいてImp3発現がmRNAレベルで上昇していることを報告している(Ueki et al, Plos One, 2012)。今回の発表では、ヒト癌肉腫におけるIMP3発現を解析し予後との相関を見出し、さらにはIMP3発現とH3K9me3化が関わることを報告した。この知見からIMP3がエピジェネティックな制御を受けている可能性が示唆され、IMP3発現に関わるメカニズム解明の端緒になり、さらには今後の治療戦略への応用が期待される。そもそもIMP3は癌胎児性蛋白であり正常組織における発現がみられないため、有望な治療標的として期待されるだけでなく、かつ上皮系腫瘍だけではなく間葉系腫瘍にも発現がみられ、IMP3を標的とする治療戦略は悪性腫瘍に対し普遍的な有用性を持つと考えられる。同君の発表はヒト癌肉腫におけるIMP3発現に対する初の報告であり、かつ有望な治療戦略のシーズとなった点が評価され受賞に至った。出張病院においても研究を継続し、女性医師として、母としてだけでなくリサーチマインドを失わない彼女の活躍を期待している。
(71期 阪埜浩司 記)