Department of Pathology, University of Cambridge
私は2013年11月よりUniversity of Cambridge, Department of Pathologyに留学させて頂いております。留学先のボスが移動をするため2014年4月まではロンドンにあるNational Institute for Medical Research, Department of Virologyに所属し、5月よりケンブリッジ大学へ移動し研究に従事しています。
ボスであるDr. John Doorbarはヒトパピローマウイルス(HPV)研究で世界的に有名な研究者で、特にHPVの潜伏感染や再活性に関して大変興味深い研究を数多く発表しています。しかしラボは小規模で、現在Dr. John Doorbar、イギリス人のHeather、日本人の江川さん、イタリア人のChristian、そして私の5人が在籍しており、9月よりケンブリッジ大学と米国ペンシルベニア大学の学生さんが加わります。小規模故に様々なテーマを割り振られますが、ボスや他の研究者との距離が近く、相談や指導を受けやすい居心地の良いラボです。このような環境の中で、私はHPV11型(低リスク型)とHPV16型(高リスク型)の細胞内維持機構の解明と、最近発見されたマウスパピローマウイルスを用いてin vivoにおける潜伏感染・再活性の機序の解明を目的とした研究を行っています。
いずれは海外留学をしたいと大学院入学の時から漠然とでしたが考えていました。大学院在籍中の国内留学先である国立感染症研究所 神田忠仁先生や諸先輩方のお話を伺ううちに強い希望となりました。実際に留学を目指して動き始めたのは2011年からです。大学院時代、その後婦人科研究室でテーマとしていたHPVを継続していきたいと思い、またHPVの潜伏感染や再活性に興味があったため、現在のボスであるDr. Doorbarにアプライのメールを送りました。その後国際学会での面接を経て現在に至ります(しかし、イギリスでの外国人雇用やビザの手続きが煩雑で時間がかなりかかりました。更に本来は9月には渡英の予定でしたがイギリス人らしいのんびりとした対応のため2ヶ月も遅れました。。。)。希望したラボで研究できるだけではなく、postdoctoral fellowとしてケンブリッジ大学に正式に雇用されることになり本当に幸運だったと思います。
イギリスに対しての一般的な印象は、物価が高くてご飯がマズイ!だと思います。確かに家賃と交通費はかなり高いですが、スーパーマーケットで購入する食材は大変安くそして質が良いものが多いです。またチーズやワインは本場だけあり驚くほどリーズナブルです。悪評高いFish and Chipsもビールと共に食べると大変美味しく、休みの日の昼にパブのテラスで飲むビールは最高です!!医療費は基本的に無料で、その中には妊婦検診や出産費、子供のワクチンも含まれます(ただし出産後24時間(!)で退院となりますが。。。)。
ヨーロッパ留学の利点の一つは気楽にヨーロッパ諸国に行けるということです。LCCを使えば往復1万円くらいでヨーロッパ各国へ行けます。夏休みには現在シチリア島に留学中の81期大野暁子先生に、来年はストックホルムにあるカロリンスカ医科大学に留学中の外科の同期に会いに行こうと目論んでいます。
最近日本では妊婦やベビーカーに対して厳しい目が向けられると聞きます。しかしイギリスでは妊婦やベビーカーを押している女性に対して親切で、バスや電車では周囲が積極的にサポートをする事が日常となっています。また「Thank you」や「Sorry」を自然に言ったり、次の人のためにドアを開けて待っているのが普通であり日本も学ばなければならない文化だと感じました。その反面、日本に住んでいるときは気がつかない日本の良さを再認識することができ、留学での貴重な経験の1つであると思います。海外留学の第一の目的は研究で結果を出す事(論文)ですが、帰国後にも継続できる研究手法や考え方を身に着ける事も大切であると思います。それと同時に海外の文化や習慣を経験することで臨床医として成長することができるのではないかと思います。海外留学は研究面や日常生活での苦労が多いですが、それ以上に得るものがあると確信しています。
私が留学するに際しお力添えを頂き、貴重な機会を与えて頂きました吉村泰典教授、青木大輔教授に深謝いたします。またイギリス留学を経験された先生をご紹介頂きました稲城市立病院院長 北井啓勝先生、ケンブリッジ大学への推薦状を書いて頂き激励のお言葉を頂きました聖マリアンナ医科大学 鈴木直教授に深謝いたします。最後になりましたが人材不足の中暖かく見送って頂きました教室のみなさん、稲城市立病院の先生方にお礼申し上げます。留学を通して日本でも継続できる、教室に還元できる研究を身につけたいと思っています。またヨーロッパの素晴らしい文化を経験し臨床医として活かすことができるよう精進して参ります。
2014年7月