研究

海外留学

千代田 達幸(平成16年卒)

Department of Obstetrics & Gynecology: Section of Gynecologic Oncology,  The University of Chicago

ただいま米国シカゴ大学産婦人科、Ernst Lengyel先生のもとで卵巣癌の研究をしております。はやいもので1年以上が経過しました。こちらでの研究とシカゴの生活についてご紹介したいとおもいます。

シカゴ大学はシカゴのダウンタウンの南約10㎞にあるハイドパークに位置しております。サウスサイドはブルースやジャズなどアフリカンアメリカンの文化で有名で、ハイドパークにはオバマ大統領邸もあります。当初サウスサイドは治安が悪いということで心配しておりましたが、ハイドパーク内はシカゴ大学警察が24時間パトロールしており、実際にはアカデミックな雰囲気あふれる閑静な街です。ラボを率いるLengyel先生は婦人科医であり、手術も多く行いながら卵巣癌研究を精力的に行っているPhysician Scientistです。研究室は当初想像していたよりも規模が大きく、ポスドクが6名、テクニシャンが5名ほど在籍しております。また産婦人科のフェロー、医学部学生や短期に世界各国から3Dモデルを習得しにくる人もいます。研究室の特徴としては、臨床検体を多く用いて研究することが挙げられ、同意をしてくださった患者さんの手術検体は手術室からそのまま研究室に運ばれ、primary cultureなどを行い、研究に使用させていただいております。手術を見学させていただくことや、病理医、放射線科医とのtumor boardに参加する機会も与えられております。世界各国からの婦人科癌研究者によるセミナーを聞く機会も多く、Lengyel先生は講演者との会食にも連れて行って下さり、国際的な研究者との交流の場にも恵まれております。また、個々のポスドクはindependentにそれぞれのプロジェクトを行っていますが、みんなで助け合う雰囲気のいい研究室です。

大学時代にニューオリンズのTulane大学で研修を行い、世界各国からの医学生や医師と触れ合うなかで、米国にいつか留学したいと漠然と思うようになりました。大学院では先端医科学研究所遺伝子制御部門の佐谷秀行先生のもと、研究の楽しさとその持つ可能性を感じることができました。その中で今後の方向性を臨床と婦人科癌研究の両立と考え、また米国のサイエンスの考え方も学びたく、留学を希望いたしました。Lengyel先生は、私が目指す将来ビジョンを体現されておりましたので学会時で渡米の際にコンタクトをとるなどして留学に至りました。

現在は主に3つのプロジェクトを行っております。卵巣癌と代謝との関係、卵巣癌の初期の転移のメカニズムの解析などを行っておりますが、医化学の授業で習ったTCAサイクル、解糖系などを再び勉強するとは夢にもおもいませんでした。自分で立案したプロジェクトもあり、ラボには聞けるひとがいなかったため、いろいろな部署や他大学の施設にあたったりしなくてはならなかったのですが、下手な英語での体当たりという状況で倍時間がかかった気がします。当初英語はなんとかなるだろうとのんびり構えていたのですが、予想以上に皆が言っていることがわからず落ち込みました。半年くらいしてようやく吹っ切れて、ブロークンでも気合いがあれば通じることがわかりました。幸いラボのみんなは親切であり、私の英語にも慣れてくれ、意思疎通は問題がなくなってきたように感じております。

噂に聞いていたシカゴの冬は、九州育ちの私には初めて経験するレベルでした。-20℃の世界は寒いというより痛いということがわかりましたが、やはり体も慣れるもので、-5℃くらいだと「今日は暖かいな」と思うようになりました。その分春と夏のシカゴは緑や花々が本当に美しく、ミシガン湖沿いを散歩するのは本当に気持ちよいです。家の近所のミレニアムパークでは毎日のようにシカゴシンフォニ―によるクラシックの音楽会が催され、芝生の上で皆が夏を楽しんでいます。

もともと要領があまりよくない私は環境に慣れるのに半年以上かかり、いろいろなことを余裕をもって学ぶことができませんでした。今後残された期間、研究を頑張るとともに、米国の医療、サイエンスのことも研究には厳しいですが普段は優しいLengyel先生、優秀なポスドク仲間からできるだけ多く学びたいと思います。最後になりますがこの場をお借りして今回の機会をお与えくださった青木大輔教授、吉村泰典名誉教授、佐谷秀行教授、同窓の先輩、同期、後輩の皆様、お世話になりましたすべての方々に感謝いたします。

米国シカゴ大学

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