研究

海外留学

平沢 晃(平成7年卒)

Institute for Molecular Medicine Finland(FIMM)

私は現在フィンランドの首都ヘルシンキに留学しています。留学先はInstitute for Molecular Medicine Finland(FIMM)という5年前にヘルシンキ大学に開設された研究所で、日本人研究者は私がはじめてということです。Medical Systems Biology チームに所属しており、指導教授はFIMMの所長でもあるオリ カリオニーミ教授です。着任して2ヶ月しか経っておらず、分かる範囲で報告したいと思います。

日本で「ヘルシンキは最も日本に近いヨーロッパ」と広告しているとおり、成田からは9時間超でヘルシンキに到着します。映画「カモメ食堂」以降、日本人観光客は非常に多いのですが、ヘルシンキ周辺の在留邦人はわずか500人位しかいないとのこと。教授からは「アキラが来て、ヘルシンキの日本人の人口が1%も増えたね(我が家は5人家族)」と言われました。

この時期(冬)、朝は9時にようやく日が昇り、3時には日が沈んでしまいます。大人でもくる病になる人がいるということで、子供が通う現地校や保健所からは「必ずビタミンDを飲ませるように」と忠告を受けます。健康維持外来で骨粗鬆症治療に投薬していた活性型ビタミンD製剤を、家族で毎日内服する日々です。

日本とフィンランドは共通する事項がいくつかあります。第二次世界大戦の敗戦国で戦後苦労をしたが著しい発展を遂げた、国土が狭く資源がない、まじめなで控えめな人柄、教育水準が高く貧富の差が少ない、社会主義国ではないかと思ってしまうほどのしっかりとした社会保障制度、昨今の景気悪化・・・など。

一方、日本と違いで一番の驚きは、バイオバンクとバイオインフォマティクスに対して多くの人材と予算をつぎ込んでいるということでした。医療機関における初診時に検体使用の包括同意を取得しているそうです。そして質の高い臨床情報の伴った白血球由来DNA・がん組織・血清・尿のバンキングをFIMMで行っています。フィンランドの人口は530万人と、北海道より(550万人)より人口が少ないですが、バイオバンキングはそれを逆手にとって活かす方法であると思います。

FIMM内にはBuilding a bridge from discovery to medicineという「スローガン」あちこちに掲げてあります。医学における発見は治療法開発のためにあり、患者さんのご厚意や研究成果を患者さんに還元するというメッセージを強く感じます。

この度は、戦後未曾有ともいえる東日本大震災後の国難の折、貴重な機会を与えていただき感謝いたしております。こちらで学んだことを日本のために役立たせることが出来るように努めたいと思っております。

2011年12月

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