Department of Radiation Oncology, University of Texas Southwestern Medical Center
2021年10月から約2年半、米国はテキサス州ダラスにありますUT Southwestern Medical Centerに研究留学に行ってまいりました。所属していた研究室はDepartment of Radiation OncologyのStory labで、Michael Story教授のもとでポスドク研究員として働かせていただきました。
ダラスはテキサス州北部にある都市で、商業と文化の中心地です。テキサスと言えば砂漠や荒野といった西部劇のようなイメージを持つ方も少なくないのではないかと思いますが、実際は高層ビル群が立ち並ぶ、全米トップ10に入る大都市です。
テキサスの気候は想像以上に苛酷でした。もともと寒がりだった私は、留学に行く前は温暖で過ごしやすいイメージを持っていましたが、テキサスの気候で特筆すべきはその寒暖差です。夏は灼熱で、43℃に達する気温と焦げるような強い日差しであったかと思うと、冬には大寒波が到来し、1週間くらい氷点下の気温が続いて全く外出できなかったりします。私は「これは、クレイジーだな」と思いました。
治安は比較的良い方だと聞いていましたが、近隣の商業施設で銃乱射事件が2回ほどあり、身の危険を感じました。これらの事件のことを研究室の同僚に話しても、“Welcome to the USA!”とのことで、米国では珍しくもなんともないことなのかもしれませんが、ちょっと多いな、と思いました。
留学には妻と2人の子供も帯同しており、週末には多くの場所を訪れることができました。特に秋から冬にかけてはイベントが多く、9月から11月には夏祭り、ハロウィーンや感謝祭、12月に入るとクリスマス関連のイベントが始まり、毎週のようにどこかに出かけているといった状態でした。ダラスには球場もあり、手軽にMLBを観戦することができました。遠征に来た大谷翔平選手を2回ほど見ることができ、家族で大いに盛り上がりました。
日本での大学院時代に放射線医学総合研究所(現・量子医科学研究所)で放射線関係の研究を行う中で、研究の持つ楽しさを感じると同時に、海外での研究の仕方を実際に見てみたいと思うようになりました。参加した国際学会でStory先生にお会いしディスカッションをしたこと、さらに放射線医学総合研究所の先生方のお口添えを頂いたことがこのラボに留学を決めたきっかけとなりました。最初にZoomで面談をしたときは、日本でお金がとれないと受け入れは難しい、とのお話でしたが、ある時を境に「給料は出すので来てほしい」という話になり、トントン拍子に留学の話が進みました。
私の研究内容は、Superoxide dismutase mimeticsというがんに対する放射線治療の効果増強が期待されている薬剤についてのものでした。ありがたいことにこれは私が大学院のときに行っていた研究に通ずるところが多く、いままでの知識や経験を活かすことができました。
しかしながら、初めての土地で2年半という期限付きで、新しい研究を行うということには苦労も多くありました。研究に関するすべてのことを自分で調べ、立案し、実行しなければならず、慣れるまでは一つ一つの作業にとても時間がかかりました。そんな中、研究室のメンバーがフレンドリーですぐに仲良くなれたことは私の研究生活の大きな助けになりました。多くのことを教えてもらい、実験を進めていくことができました。何事も最後は人間関係だな、と思いました。
留学中に得られた経験は私にとって何物にも代えられない貴重な財産となりました。帰国後はここで得た経験を生かして、臨床と研究で貢献したいと思います。最後になりましたが、大学院時よりご指導いただき、今回貴重な留学の機会を与えてくださった青木大輔前教授、田中守教授、山上亘教授、阪埜浩司前准教授、心優しく送り出してくださった立川病院の諸先生方、教室員の皆さまをはじめとする多くの方々に支えられて今回の留学ができましたことを深く感謝いたします。