研究

海外留学

的場 優介(平成23年卒)

Massachusetts General Hospital
Vincent Center for Reproductive Biology, Boston

2021年7月より米国ボストンにあるマサチューセッツ総合病院MGH: Massachusetts General HospitalのBo Rueda先生のもとでリサーチフェローとして留学させていただいております。

ボストンは米国東海岸に位置し、アメリカ独立戦争のきっかけとなったボストン茶会事件や、独立戦争の舞台として有名です。ボストンは「古都」と称され長期休暇の時期には多くの旅行客で賑わう、日本人にとっての京都のような都市です。街の至る所に古くからある建物が残っており当時の面影を感じさせます。その一方、近年はバイオテックカンパニーや創薬のメッカとなっており、医学研究におけるシリコンバレーとして、歴史と先端を感じられるユニークな地域となっています。

MGHは1846年に世界で初めてエーテルによる全身麻酔下手術を行った場所であるエーテルドームが有名ですが、わたしの勤める研究棟はまさにこの隣に位置しています。所属するRueda研究室は難治性婦人科癌(高悪性度子宮体癌や卵巣癌)に関する基礎研究を行っている研究室です。研究室のユニークな点としては、MGHの婦人科臨床検体のバンクを管理している点が挙げられます。そのため、研究にも臨床検体、臨床情報や、患者組織から樹立したオルガノイドを用いることができ、トランスレーショナル領域の研究を得意としています。Rueda先生は医師ではありませんが、検体バンクの管理等の運営上、臨床医とも接点が多いため実臨床を念頭に置いた研究が行われています。Rueda先生が臨床との接点を多く持っていたため、私もMGHの婦人科癌手術の見学や術後治療を決定するTumor board、臨床研究カンファレンス等に参加させていただけており、米国の婦人科腫瘍領域の臨床を肌で感じることができています。

研究室は私を含めポスドクが3人おり、インド、イラン、日本出身と、多国籍な構成になっています。個性が豊かで、日々新たな発見があります。生活スタイルは人それぞれで、早朝から来て早くに帰る人もいれば、夕方出てきて夜中まで研究している研究者もいます。私は学位を臨床研究で頂いたので、基礎研究は本当に素人で米国での研究生活を始めました。始めのうちはわからないことも多く本当に大変でした。早朝から夜中まで実験をしても、実験結果は見るも無惨なものだったことも数え切れないほどありました。しかし、Rueda先生を始め、ラボの仲間に支えられたおかげで頑張ることができ、MGHでの研究結果を2023年のAmerican Association for Cancer Research (AACR)年次総会で発表させていただけ、論文としてもBritish Journal of Cancer誌に掲載いただけることになりました (https://www.nature.com/articles/s41416-024-02621-x)。

アメリカ研究留学を経験し、医学基礎研究の基本的な考え方などを学んだことはもちろんですが、外から日本の医療と、日本自体を見ることができたのはかけがえのない経験でした。研究大国と呼ばれるアメリカですが、それと比較しても日本には負けず劣らず、素晴らしい環境と優秀な人材が揃っていると、心から思えました。2024年初夏に帰国予定ですが、日本から、世界の患者さんの役に立つ研究を発信できるよう精進していこうと思っています。

最後になりますが、青木大輔先生、田中守先生、山上亘先生を始め、この度の留学に際しお力添えいただいた先生方、またご迷惑をおかけしたにも関わらず送り出してくださったすべての先生方に感謝申し上げます。

2024年3月

マサチューセッツ総合病院MGH
一番右:筆者

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