生殖生理研究室は、一般不妊治療から体外受精をはじめとする生殖補助医療まで、体系的に学ぶ研究室です。当研究室で学ぶひとりひとりが将来、大学病院・関連病院で一から殖補助医療を立ち上げる、あるいは支えていくことのできる人材を育成することを目標にしています。最新知識をアップデートしながら自分で考える力を養い、病態を理解し、治療方針についてきちんと自らの言葉で説明できるよう不断のトレーニングを重ねた結果として、産婦人科専門医取得後には、学位や、あるいは生殖医療専門医の取得が自然とできるようになっているはずです。
i-vについて、専門領域を超えて横断的に取り組んでいます。
1978年にルイーズ・ブラウン嬢が世界ではじめて体外受精(生殖補助医療技術)で誕生しましたが、生殖補助医療はヒトで成功して40年弱の比較的新しい学問であり、まさに日進月歩で革新されています。そのため、エビデンスの更新は不可欠です。言い方を変えれば、まだわかっていないことのフィールドは広く残されています。私たちは卵子や受精卵について臨床現場で遭遇して芽生える『なぜ?』を解き明かすべく、着床前期におけるグローバルなDNA脱メチル化とこれに伴う遺伝子発現変化のメカニズムから、全能性獲得メカニズムまで明らかにすることを目指します。これはいわばヒトの成り立ちのはじまりの謎を解き明かすことに等しいと考えています。ここで得られる知見は、不妊治療のみならず、より良い幹細胞の樹立という観点から、再生医療にも貢献できると考えています。研究に専念する大学院進学も可能です。
受精卵には個体に発生することができる”全能性”という特徴があります。しかし卵に含まれるどの因子が全能性を司っているかはいまだわからないままです。ここでは、着床前期胚におけるメチル化と遺伝子発現制御メカニズムに着目し、全能性獲得メカニズムを明らかにします。さらに、in vitroでのモデルとして、受精卵から樹立され、多分化能性を有するES細胞と、転写因子により樹立され、ES細胞と同じような多分化能性を有するiPS細胞を比較し、より良い初期化方法を探索します。
臨床の現場では、受精卵の良し悪しは形態的な評価のみに依って行われているのが現実です。卵胞成熟から着床に至るまでの発生を継時的に観察し、タンパク、低分子タンパク、miRNAの組織間でのやり取り(クロストーク)を明らかにします。ここで得られる知見は、培養液の改善や新しい質的評価法の開発につながると期待されます。
こうした研究は、産婦人科関連疾患の病態解明のみならず、新しい治療法やより安全な体外受精技術の開発につながると考えています。ぜひ私たちと一緒に日本の、そして世界の産婦人科学のパイオニアとしての一翼を担いましょう。