2017.12.10
今枝慶蓉君(94期)が第134回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会で優秀演題賞を受賞
平成29年12月9日から10日まで栃木県総合文化センターで開催された第134回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会において、教室の今枝慶蓉君(94期)が優秀演題賞を受賞した。同君の演題は「女性性器形成手術を振り返って得られた鏡視下手術併用の有用性についての検討」と題した発表で、Rokitansky症候群やOHVIRA症候群、Wunderlich症候群、子宮頸部—体部離断症例などに対し当院で行われた手術内容とその要所を詳細に報告した。女性性器形態異常は術前画像検査でも把握できない複雑性を呈することもあり、個々の症例に応じた術式を術中に検討し決定しなければならないが、鏡視下手術を併用することで術中により多くの情報が得られ個々の症例に応じた術式を完遂できた。非常に稀でかつ複雑な症例を分かりやすく、かつ丁寧にプレゼンテーションし、明日からの臨床に還元できるメッセージを聴衆に発信したことが高く評価され今回の受賞に至った。同君は現在後期研修医1年目であるが、日々の臨床業務を終えてから発表準備に奮励してきた同君の努力と情熱が快挙をもたらした。今回の経験を契機にさらなる研鑽を積み、今後も素晴らしい学会発表を見せてくれることを期待したい。
(82期 小林佑介 記)
2017.11.29
このたび、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室(青木大輔教授)の平沢晃専任講師らの研究グループは、徳島大学大学院医歯薬学研究部人類遺伝学分野の井本逸勢教授および防衛医科大学校医学教育部医学科病態病理学の津田均教授らとの共同研究において、日本人の卵巣がん患者における遺伝性のがんの頻度と、その特徴を明らかにしました。卵巣がんの患者数は、世界的に増加傾向にありますが、早期発見が困難なことから、発症リスクが高い人を特定して予防策を立てることができれば、死亡数の低下が見込まれます。
本研究では、慶應義塾大学医学部産婦人科学教室のバイオバンクに血液を保存し、研究に使用することに同意いただいた計230名の卵巣がん、卵管がんおよび腹膜がんの患者を対象に、日本で初めて、系統的に遺伝性卵巣がん関連遺伝子の生殖細胞系列変異を調べ、41名(17.8%)の患者に11遺伝子の変異を見出しました。この中には、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の原因遺伝子であるBRCA1(19例、8.3%)、BRCA2(8例、3.5%)や大腸がんなどを発症しやすいリンチ症候群の原因遺伝子(6例、2.6%)の変異が含まれます。
さらに、これらの変異を持つ人は、若年で卵巣がんと診断されたり、血縁者に卵巣がん患者がいたりすることや、高異型度漿液性癌と呼ばれる型の卵巣がんを持つことが多いという特徴がありました。このような特徴をもつ人は、遺伝カウンセリングでのリスクの評価や遺伝子検査を行うことで、自身や血縁者の診療の際に遺伝的なリスクを考慮し、予防策をたてることで健康を維持できる可能性があります。そのため、今回の研究成果は、個人の発症リスクを前提と卵巣がん予防や治療への道を開き、発症による死亡率の減少が期待されます。
本研究成果は、2017年11月28日(米国東部時間)に、科学雑誌『Oncotarget』オンライン版にて公開されました。
当学よりのプレスリリース全文は、以下をご覧下さい。
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/files/2017/11/29/171129-2.pdf
2017.11.07
小林佑介君(82期)が第32回日本女性医学学会学術集会で優秀演題賞を受賞
平成29年11月4日から5日まで大阪国際会議場で開催された第32回日本女性医学学会学術集会において、教室の小林佑介君(82期)が優秀演題賞を受賞した。同君の演題は「メバロン酸経路を標的とした卵巣癌発癌予防を目指した基礎的研究」と題した発表で、同君が国内外に発信し続けているメバロン酸経路を標的としたドラッグリポジショニング研究についての成果を、ヘルスケア・女性医学の観点から検討したものである。今回の発表では、メバロン酸合成経路を阻害する脂質異常症治療薬スタチンが細胞レベルで増殖抑制効果、マウスで抗腫瘍効果を示すことを報告した。また、スタチンはプログラム細胞死であるautophagyとapoptosisを誘導することで抗腫瘍効果を発揮していると考えられること、また、癌細胞で見られるワールブルク効果からTCA回路の活性化を介して酸化的リン酸化へ誘導している可能性も明らかとした。脂質異常症のうち、高トリグリセリド血症は50歳代女性の54%に、高コレステロール血症は60歳代女性の39%で認められる。その治療薬であるスタチンが、同じく閉経前後より罹患率が増大する卵巣癌に対して予防薬として用いられる可能性を基礎的研究レベルで明らかとした内容が高く評価され今回の受賞に至った。同君の研究成果はこれまでにも国内外の各学会や新聞報道でも注目を集めているが、女性の生涯の健康を守ろうとする産婦人科医として、今回の受賞を契機に同君の益々の活躍とさらなる研究成果を期待したい。
(71期 阪埜 浩司 記)
2017.11.07
平沢 晃君(74期)が第32日本女性医学学会 学会奨励賞を受賞
平沢 晃君(74期)が日本女性医学学会 学会奨励賞(臨床研究部門)を受賞し、平成29年11月4日から5日まで大阪国際会議場で開催された第32回女性医学学会学術集会にて受賞式および受賞講演を行った。同賞は女性医学に関する優れた研究業績をあげた研究者に授与される賞である。
同君は一貫して当教室のバイオバンクの整備に関わってきている。今回はそれらの試料を活用した、主にがんサバイバーの女性ヘルスケアを念頭においたバイオバンク・コホート研究と、がんゲノム医療の研究成果が評価されて、今回の受賞に至ったと思われる。
受賞講演ではこれまでの同君が取り組んできた腫瘍遺伝学および女性医学の研究成果のみならず、がんゲノム医療実用化の大きな潮流と今後の展望像について、同君が参画しているEvidence-based Network for the Interpretation of Germline Mutant Alleles(ENIGMA)やThe Global Alliance for Genomics and Health (GA4GH)などの国際データシェアリング事業についても解説した。日本からゲノムデータを発信することは国際貢献に繋がるのみならず、最終的には 目の前の患者さんや血縁者に対する利益にも直結することを述べた。
なお同君は日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医であり、当院健康維持外来教室においてがんサバイバーのヘルスケアに関して実臨床での指導を行っており、引きつづき女性医学の発展を益々牽引していただくことを願っている。
(85期 橫田 めぐみ 記)
2017.08.04
山田 満稔君(81期)がInternational Society for Stem Cell Research 2017 Merit award, Travel award受賞、およびSTEM CELL REPORTS Best of 2016-2017 に選出
2017年6月14日から17日にかけて米国ボストンで開催された国際幹細胞学会(International Society For Stem Cell Research Conference; ISSCR)の第15回Annual Meetingにおいて、山田満稔君(81期)が “Genome transfer prevents fragmentation and restores developmental potential of developmentally compromised postovulatory aged mouse oocytes” を発表し、Merit AwardおよびTravel Awardを同時受賞した。ISSCRは再生医療・幹細胞研究の最先端を走る研究者たちが集う世界最大級の学会である。なかでもMerit Award / Travel Awardは研究内容が特に秀でた若手研究者に与えられる。
近年女性の晩婚化に伴い、加齢による卵子の質低下(卵子の加齢)は生殖補助医療において重要な課題となっている。山田君はマウス排卵後加齢卵をモデルに、卵子の加齢の原因は細胞質異常にあり、卵子間核置換により加齢卵子の発生率が改善されることを示した。発生率改善の機序として、細胞質分裂、染色体分配および染色体パッセンジャー複合体構成分子の局在の異常がそれぞれ修正されることを明らかにし、Stem Cell Report誌に報告した。本論文はSTEM CELL REPORTS Best of 2016-2017に選ばれるなど、国際的に高いインパクトを与えている。
山田君は、臨床、研究の両面で、卵子の加齢による不妊症の原因解明に継続して取り組んでいる。本研究は同君の米国留学先の研究室における成果ではあるが、今後さらに研究を進めることで、新たに構築される理論に基づいた本学発の革新的治療法の開発へ大きな期待が寄せられる。
(71期 浜谷 敏生 記)
2017.08.01
真壁 健君(88期)が第59回日本婦人科腫瘍学会学術講演会にて優秀ポスター演題賞を受賞
平成29年7月27-29日に熊本市で開催されました第59回日本婦人科腫瘍学会学術講演会にて、真壁 健君(88期)が優秀ポスター演題賞を受賞しました。発表演題は「子宮体癌における頸部間質浸潤の深度に関する検討」で、子宮体癌の再発リスク因子の1つである頚部間質浸潤にフォーカスを当てた臨床研究です。
子宮頸部間質浸潤は以前は子宮体癌の再発中リスク因子でしたが、2013年版のガイドラインからは再発高リスク因子になりました。しかしながら、子宮頸部間質浸潤はご存知のとおり、比較的浅層のみの症例と、全層に及ぶような深い浸潤を有する症例があり、それらをひとまとめにして、再発高リスク因子とするには疑問があります。本研究は、まさにそういったクリニカルクエスチョンに答えるものであり、子宮頸部浅層まで(1/3まで)の浸潤は独立した予後因子にはならないことを示しました。子宮頸部間質浸潤の評価を細分化し、浅層までの浸潤であれば、追加治療を必ずしも要さないのではないかという点を発信できたことは非常に意義があるものと考えます。
真壁君は現在大学院3年目であり、臨床を離れて基礎研究中でありますが、その傍ら臨床医の視点での臨床研究も並行して頑張っております。今回の経験を活かして、さらなる研鑽を積んでいって欲しいと考えております。
(79期 山上 亘 記)
2017.06.19
玉川真澄君(93期)が第133回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会にて若手優秀演題賞を受賞
平成29年6月17日18日に東京で開催されました第133回関東連合産科婦人科学会総会・学術集会の若手ポスターセッションにて、玉川真澄君(93期)が若手優秀演題賞を受賞しました。発表演題は「難治性骨盤内炎症性疾患と鑑別を要した好酸球性胃腸炎の1例」で、当科で確定診断に至るのにかなり難渋した症例についての症例報告です。
本症例はもともと左卵巣腫瘍を認めており、当初は卵巣腫瘍の捻転または破裂を疑って手術を行ったものの、その後下腹痛と発熱が改善せず、1ヶ月以上の経過のうえで上記診断に確定して、ステロイドの投与を行ったことで寛解を得たといった経過でした。好酸球性胃腸炎は難病の1つであり、一般的には消化器症状や腹水貯留などを伴うことが多いですが、本症例のように感染性の骨盤内炎症性疾患との鑑別が困難な症例も起こりうるため、本疾患を産婦人科領域の学術集会で発信できたことは非常に意義があるものと考えられます。初めてのポスター発表ではありましたが、自ら複雑な経過を緻密かつわかりやすくポスターにまとめ、それを聴衆に明快に示すことができたのが、受賞につながったのだと思います。
玉川君は後期研修医2年目で、現在は川崎市立川崎病院に出向して研修中ですが、今回の経験を活かして、さらなる研鑽を積んでいって欲しいと考えております。
(79期 山上 亘 記)
2017.06.19
小林佑介君(82期)が25th Asian & Oceanic Congress of Obstetrics and GynaecologyでShan S. Ratnam Young Gynecologist Awardを受賞
平成29年6月15日から18日まで香港で開催された25th Asian & Oceanic Congress of Obstetrics and Gynaecology(AOCOG)において、教室の小林佑介君(82期)がShan S. Ratnam Young Gynecologist Awardを受賞した。
同賞はアジア・オセアニア産婦人科連合(Asia and Oceania Federation of Obstetrics and Gynaecology: AOFOG)が、加盟学会の活動に寄与し、加盟学会および AOFOG の将来のリーダーとして期待される若手産婦人科医を表彰するものである。同君は日本産科婦人科学会より推薦され同賞を受賞した。さらに各国のYoung Gynecologist Award受賞者が作成した新規論文が事前選考され、同君はTop 10 best selected papersに選出されていた。本学会中に上位10人によるAward Sessionが行われ、最終選考により同君が25th AOCOG Final Winnerとして選出され賞金が授与された。同君はメバロン酸経路を標的としたドラッグリポジショニング研究について発表したが、ドラッグリポジショニングによる医療格差の解消を目指した研究内容、そして発表及び質疑応答の的確さが高く評価されて今回の受賞に至った。同君の研究成果はこれまでにも国内の各学会や新聞報道でも注目を集めているが、国際学会での受賞を契機に世界レベルでの研究の進展、世界中の患者への成果の還元が期待される。
(71期 阪埜 浩司 記)
2017.05.29
阪埜浩司君(71期)が平成28年度第5学年(97回生)のBest teacher award 第2位に選出
阪埜浩司君(71期)が、平成28年度第5学年(97回生)のBest teacher award第2位に選出された。
Best teacher awardは医学部の各学年1年間で指導を行ったすべての教員がノミネートされ、学生がBest teacherと思う教員に投票するものである。同君は慶應義塾医学部新聞が毎年行う医学部6年間でのBest teacherを決める慶應医学部教員総選挙でも96回生からBest teacherの設問で1位を獲得しており、同君が熱意を持って学生教育を継続していることが伺われる。
かくいう私も同君に指導を受け、産婦人科を生涯の科として選んだ一人である。頭を使わず、効率よく試験を通せばいいだけと考えがちの学生生活の中で、同君ほど頭を使い、教科書に載っていないことに答えを出すよう指導頂いた教員はいなかった。当時も今も、非常に厳しい指導で学生の間では恐れられているが、その厳しさの裏の愛情が学生に伝わっているからこその獲得であろう。
また、同君を選出した97回生は、先に広島で開催された第69回日本産科婦人科学術集会にも10名程が参加しており、産婦人科への興味を持ってもらえている様子だ。
今後も次世代の産婦人科医育成に向けた教員一同の熱い教育に期待したい。
(90期 的場 優介 記)
2017.05.03
飯田美穂君(87期)が第69回日本産科婦人科学会学術講演会にて優秀論文賞(女性ヘルスケア部門)を受賞
平成29年4月13日から16日まで広島グリーンアリーナで開催された第69回日本産科婦人科学会学術講演会において、産婦人科学教室の飯田美穂君(87期)の論文Profiling of plasma metabolites in postmenopausal women with metabolic syndrome (Iida M, et al., Menopause, 2016)が優秀論文賞(女性ヘルスケア部門)を受賞した。同賞は、周産期医学、生殖医学、婦人科腫瘍学、女性医学の4部門において、年間で国内外の科学雑誌に掲載された論文のうち、厳正な審査を経て最も優秀と判断された論文の発表者に授与される賞である。同君の論文では、メタボローム解析を用いて、閉経後女性に急増するメタボリック症候群にアミノ酸代謝変化が強く関連していることを、日本人の閉経後女性において初めて報告した。これまで欧米諸国の肥満集団を対象に、肥満や糖尿病、心血管疾患とアミノ酸代謝が密接に関わっていることは数多く報告されてきているが、標準体重でもメタボリック症候群を発症する本邦のようなmetabolically obese, normal weight (MONW)の集団で、かつ閉経後女性に着目した研究は前例がなく、『女性医学×疫学×メタボロミクス』という本研究の独創性と新規性が高く評価されて、今回の受賞に至ったと思われる。今後の同君の益々の活躍と研究のさらなる展開に期待したい。
(71期 阪埜 浩司 記)
2017.02.25
小林佑介君(82期)が東京都医師会の平成28年度医学研究賞奨励賞を受賞
平成29年2月25日に東京都医師会館で平成28年度東京都医師会医学研究賞奨励賞の表彰式が執り行われ、教室の小林佑介君(82期)が同賞を受賞した。同賞は東京都医師会が臨床医学、基礎医学、社会医学の優れた原著論文を発表した東京都医師会員を表彰するものである。同君は平成27年にClinical Cancer Research誌において原著論文“Mevalonate pathway antagonist inhibits proliferation of serous tubal intraepithelial carcinoma and ovarian carcinoma in mouse models.” が掲載されていた。その研究内容は脂質異常症治療薬スタチンが卵巣癌の発生や進展を抑制する効果を動物実験で明らかにしたものである。また、同時に、その効果にタンパクのプレニル化に関わる経路が関与している可能性や、アポトーシスやオートファジーといったプログラム細胞死により引き起こされていることも報告されていた。同君の研究内容はこれまでにも各学会や新聞報道でも注目されているが、医師会という地域の医療・介護・福祉に寄り沿う公益団体からも評価されたことから、今後の同君の益々の活躍と実地医療への研究成果の還元が期待される。
(71期 阪埜 浩司 記)