木須伊織君(83期)が日本産科婦人科内視鏡学会学会賞を受賞
木須伊織君(83期)が令和3年9月に開催された第61回日本産科婦人科内視鏡学会学術講演会にて学会賞を受賞し表彰された。
学会賞は発表演題の中で最も卓越した演題に対して授けられる名誉ある賞であり、約800演題という多数の演題数の中から木須君が選出された。受賞演題は、「腹腔鏡下広汎子宮全摘術時におけるneovaginaの形成~腟短縮による性機能障害を予防するための工夫~」である。
木須君は現在、当教室の関連病院の1つである国家公務員共済組合連合会立川病院で主に婦人科患者の診療に従事しているが、その中でも腹腔鏡手術の導入や発展に力を注いでいる。木須君は子宮悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術、骨盤臓器脱に対する腹腔鏡下仙骨腟固定術の導入、さらには婦人科領域での高難度新規医療技術である腹腔鏡下広汎子宮全摘術や腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清の導入にも尽力し、同院の婦人科腹腔鏡手術件数は約350件/年にまで到達し、大学病院やがんセンターに劣らぬ高い医療技術と症例数を提供し、多摩地域の産婦人科医療に多いに貢献してきた。
一方で、婦人科手術は一般的には臓器の摘出術がほとんどであるが、木須君は女性生殖器の再建外科手術にも力を注ぎ、その一つの活動として、先天的に子宮や腟を欠損するロキタンスキー症候群の専門外来を同院に開設している。全国各地から数多くの先天性女性生殖器奇形の患者がこの専門外来に紹介され、同院では国内で最も造腟術や女性生殖器再建術を行っている施設として知られるようになった。
木須君はこのように婦人科腫瘍医と生殖器再建外科医の両者の立場として活躍する中で、子宮頸癌における腹腔鏡下広汎子宮全摘術時の腟切除により、術後に腟短縮をきたすことで、特に若年女性の術後の性機能障害によるセクシャリティの低下の課題に着目した。その課題を克服するために、木須君はこれらの患者に対して子宮摘出時に腹腔鏡下に造腟術を行い、腟を再建することで性交を可能にする技術を考案し、この新しい手術手技が多いに評価され今回の受賞に至った。
現在、木須君が全力を注いでいる子宮性不妊女性に対する子宮移植研究もこのような多面的な診療姿勢によって生まれた研究であるといえる。今後も立川病院での腹腔鏡手術や女性生殖器再建外科手術のさらなる発展と慶應義塾大学病院における国内初の子宮移植の臨床応用へ向けた木須君の取り組みに注目したい。