産科

非配偶者間人工授精 (AID) について

現在はAID初診の新規予約の受け付けを中止しています。
精子ドナーの確保に最大限努力しておりますが、今後もさらに難しくなることが予想され、一施設の努力のみでは本治療の存続自体が困難になっている状況です。何とぞご理解を賜りますようお願い申し上げます。

非配偶者間人工授精(AID)は、夫以外の第三者から提供された精子を子宮内に注入して妊娠をはかる方法です。 日本の戸籍により法的に婚姻していることが証明できる御夫婦で、原則として夫の精子が無い場合、つまり「無精子症」のカップルがこの治療を受けることができます。例外として、AID以外の方法では妊娠が不可能と医学的に判断された場合も適応となることがあります。

AID治療の実際

提供精子

提供される精子は、妊娠する確率が高く、また感染や遺伝疾患の危険性のできるだけ少ないものを使用しています。さらに同じ提供者から生まれた子どもの偶発的な近親婚の確率を少しでも低下させるために、一人の提供者が作る子どもの数を制限しています。また夫婦のABOおよびRh血液型を検査して、生まれてくる子どもの血液型からだけで、人工授精を施行したことが明らかにならない様に配慮しています。

同意確認

AID治療において、夫婦の同意確認はとても重要です。治療開始前に(婚姻関係、家族関係を明確にするため)戸籍謄本を持参して夫婦で来院してもらい、提供者の匿名性、秘密厳守、嫡出確認等を明記した合意書を作成します。その上で、授精のたびごとに書面による夫婦の同意が必要です。

その他の検査

その他に、子宮卵管造影子宮頸がん検査、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)、クラミジア抗体検査が必要です。いずれの検査も他院で行った場合は結果を持参して頂き、当院での追加検査が不要かどうか検討します。


ご夫婦の血液型検査のみは他院の検査結果を持参していただいても、当院であらためて行うことにしています。初診時に夫婦で来院の際に、夫婦とも採血を行います。当日の外来の混雑具合によっては、相応の待ち時間をいただいております。帰りの飛行機、新幹線などのチケットを時刻指定でお求めいただくことはお薦めできません。

AID治療の実際

現在、日本では精子が匿名で提供されているため、本法で産まれた子どもは遺伝上の父親を知ることができません。また逆に提供者も自分の子どもを特定することはできません。さらにAIDの事実を子どもに知らせるかどうかについても、親の判断に任されています。

しかし、1989年11月20日国連総会において批准された児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)第7条には「子はできる限りその父母を知り、かつ父母によって養育される権利を有する」とあり、最近になっていくつかの国では子どもの知る権利を認める方向にシステムを改変させています。我々がこれまでに行った子どもの発育・発達・学業成績調査や出生後の父親の意識調査から、匿名による精子提供を前提とした我が国のAID治療は、それ以外の治療では親になれなかった多くの夫婦に健全な家庭をもたらし、健全な精神・身体能力をもつ子どもたちを育てる事が可能である事を示しています。

また一方で、AIDの事実が明らかになったときに子どもがうける痛手ははかり知れません。AIDで生まれてきた子ども達が望まれてこの世にあらわれ両親に愛されて育ってきたことは事実ですが、問題が起こりうる治療である事も確かなのです。外来でよくご相談した上で手続きを行います。尚、生まれてくる子の福祉を考え、当院では夫婦のいずれかが日本国籍を有する場合に限りAIDを行っております。




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