生殖能力を有する年齢にあるがんや自己免疫疾患の患者さんに対して、がん治療医はなによりもがん治療を最優先します。しかし化学療法や性腺に対する放射線暴露により、治療後に性腺機能が著しく低下あるいは消失し、その結果、不妊となりうることが知られています。
原疾患の治療前に、妊よう性を温存する方法として、本人の意思に基づき、男性の場合は精子、女性の場合は未受精卵子または胚・受精卵を凍結・保存すること(妊よう性温存療法)を行います。 当院は日本産科婦人科学会が定める「医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する登録」施設として、腫瘍センター、ブレストセンター、婦人科、および他科と連携して妊よう性温存療法(男性:精子凍結、女性:卵子・受精卵凍結、婦人科腫瘍に対する子宮温存手術)を実践しています。*卵巣凍結は行っておりません。
胚(受精卵)凍結保存 | 未受精卵子凍結保存 | 精子凍結保存 | |
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対象 | 男性パートナーがいる女性 (既婚、事実婚) |
未婚女性 | 精通後の男性 |
必要な期間 | 約2週間 | 約2週間 | 当日可 |
妊よう性温存療法は、かならずお子さんが得られることを確約するものではありません。しかし、将来に関するいくつかの不安を軽減させて、原疾患の治療に積極的に参加出来るような一助になりえます。リプロダクションセンターでは、総合病院としての大学病院の強みを生かして、小児、思春期、若年がん患者さんにサバイバーシップの向上という恩恵がもたらされるよう、原疾患の治療を担当する医師と生殖を担当する医師、看護師(カウンセラー)、培養士とのチームで、診療にあたっていきたいと考えています。
現在治療をうけていらっしゃる医療機関の担当医師(主治医)からの紹介制としております。受診を希望される場合は、当院指定の診療情報提供書および医療機関指定の紹介状とあわせて、がん・生殖外来専用の診療情報提供書をがん治療の担当医師に記載して頂き、ご持参の上受診して頂くようお願いします。
●毎週 月曜・火曜・木曜の14~15時、完全予約制です。
●他院からは、当外来指定、医師指定の紹介状をお持ちの方のみ受け付けおります。
●原疾患の治療が差し迫っている場合は、通常の生殖医療・初診外来(開院日は毎日午前中)でも受け付けておりますが、待ち時間が長くなったり、専門看護師の介助が難しかったり致しますので、ご了承下さい。
●既婚者の方は原則パートナーとともに、未成年者の場合は保護者の方とともに、ご来院下さい。
がん生殖外来へご依頼の際の診療情報提供書(卵子・受精卵凍結)(Excel)
がん生殖外来へご依頼の際の診療情報提供書(精子凍結)(Excel)
妊よう性温存療法はすべて自費診療となっています。使用する薬剤、治療期間により費用は変化します。詳しくは担当医師・看護師にお問い合わせください。まずは相談のみの受診も歓迎いたします。
妊よう性温存療法および初回の凍結保存に要した医療保険適用外費用に対する助成事業がおこなわれています。
自治体によって助成上限額などが異なる可能性がありますので、以下のリーフレットをご覧の上、お住まいの自治体にお問い合わせ下さい。
リーフレット(厚生労働省HP):https://www.mhlw.go.jp/content/ninyoseiA4_s.pdf
小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業(厚生労働省HP):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_byoin_00010.html